「行ってよかったよね?」…夫との温度差に気づいた帰宅後
4泊5日の旅行は、大きなトラブルもなく終わりました。
義母は温泉を喜び、娘も祖母と過ごせて楽しそうでした。写真を見返せば、確かに良い思い出に見えます。ですが美咲さんの心には疲れが残っていました。
帰宅した夜、亮介さんは満足そうに言いました。
「母さん、すごく喜んでたな。行ってよかったよね」
美咲さんは、すぐにはうなずけませんでした。
「うん。でも、ちょっと疲れた」
そう言うと、亮介さんは不思議そうな顔をしました。
「そんなに大変だった?」
その一言に、美咲さんは胸の奥が冷たくなったといいます。
旅行中、亮介さんは義母の荷物を持つこともありました。運転もしました。けれど、義母の体調、食事、会話、娘との間の空気、予定変更の判断――そうした細かな気配りは、ほとんど美咲さんが担っていました。
「大変だったことを説明しないと分かってもらえない。それがしんどかったんです」
美咲さんは、義母が嫌いなわけではありません。和枝さんも、意地悪をしたわけではありません。むしろ感謝の言葉もありました。
それでも、美咲さんには「自分だけが気を張っていた」という感覚が残りました。
数日後、美咲さんは亮介さんに改めて話しました。
「お義母さんと旅行に行くのが嫌だったわけじゃない。でも、私はずっと“みんなが気まずくならないようにする係”だった気がする」
亮介さんは驚いた表情を見せました。
「そんなふうに感じてたんだ」
美咲さんはうなずきました。
「次に行くなら、あなたがもっとお義母さんのことを見てほしい。私は添乗員じゃないから」
その言葉で、亮介さんもようやく気づいたといいます。
家族旅行の負担は、予約や移動だけではありません。誰が疲れているか。誰が食べられないものは何か。場の空気が悪くならないように、誰が言葉を選んでいるか。
そうした“見えない調整”を一人が担い続けると、楽しいはずの時間が疲労に変わってしまいます。大切なのは、遣いや役割も含めて分け合うことなのかもしれません。
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