(※写真はイメージです/PIXTA)

就職、離婚、病気、非正規雇用――人生のどこかでつまずいた子どもを支え続ける高齢の親は少なくありません。しかし、援助が長期化すると、親の老後資金や生活そのものを圧迫してしまうケースもあります。

「私たちの老後、どうなるの?」…崩れ始めた夫婦の生活

転機は、美代子さんの入院でした。

 

大きな病気ではありませんでしたが、検査と治療で医療費がかさみました。そのとき、美代子さんは久しぶりに夫婦の通帳を確認します。

 

「残高を見て、頭が真っ白になりました」

 

想像以上に、貯蓄が減っていたのです。由香さんへの援助は、数年間で数百万円規模になっていました。

 

さらに問題だったのは、“終わりが見えない”ことでした。由香さんは感謝していないわけではありません。しかし、親の援助が生活の一部として定着してしまっていたのです。

 

「今月だけお願い」

「来月には返すから」

 

その言葉が、何年も繰り返されていました。

 

美代子さんは初めて夫に強く言いました。

 

「私たちの老後、どうなるの?」

 

しかし正人さんは、娘を突き放せませんでした。

 

「今さら急に支援をやめたら、あの子が困るだろ」

 

その言葉に、美代子さんは涙が止まらなかったといいます。

 

「気づけば、“娘を支えること”だけで毎日が回っていたんです」

 

現在夫婦は、由香さんへの援助額を減らす方向で話し合いを進めています。ただ、長年続いた関係は簡単には変えられません。

 

「援助を減らすって、“娘を見捨てる”みたいで苦しいんです」

 

正人さんはそう話します。一方、美代子さんはこう漏らしました。

 

「娘の人生を支えているつもりだったけど、いつの間にか、私たち自身の生活が崩れていました」

 

親が子を心配する気持ちは、年齢を重ねても消えるものではありません。しかし、“支えること”と、“依存すること”の境界線は、ときに曖昧になります。

 

夫婦は今、その境界線を引き直そうとしています。それは決して、娘への愛情がなくなったからではありません。親子として、これ以上一緒に沈まないために必要な選択だったのです。

 

 

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