1ヵ月で「プラス4万円」の衝撃
投資を始めて1ヵ月が経った頃、スマホの画面には期待以上の数字が表示されていました。世界的な株高と円安の波に乗り、投資信託の評価額がわずか1ヵ月ほどで8%も上昇していたのです。
50万円だった運用資産は、一気に54万円台へ。もちろん現金化していないので単なる含み益ではありますが、加藤さんは数字を見て歓喜しました。
「ちょっと待っただけで4万も増えた。投資ってのは、すごいもんだな」
この強烈な成功体験が、加藤さんの日常を狂わせ始めました。
50万円で4万円ほど。ということは100万円入れていたら8万円だった。それは、加藤さんの1ヵ月のアルバイト代を超える金額です。
「よし、思い切って……150万円追加しよう。この調子で利益が出たら、すごいことになる。国が推薦している仕組みだから、酷いことにはならんだろう」
加藤さんは計200万円の原資で、老後の安心を得ようとしたのです。
「お金の不安解消」のための投資だったはずが…
しかし、貯金の4分の1という大金を投資に回した加藤さんは、朝起きてから夜寝るまで、日に何度もスマホで基準価額をチェックするようになります。投資信託の価格更新は1日1回だと知っている。それでも、確認せずにはいられないのです。
相場は良い時ばかりではありません。翌々月、株価は急落。「頼む、上がってくれ」という願いもむなしく下がり続け、評価額もプラスからマイナスへ。
その後、それほどの時間を待たずして、相場は一転プラスになりました。ところが「また下がるかもしれない」という不安がなくなりません。アルバイト中もスマホが気になり、仕事が上の空になることもしばしばでした。
「お金の悩みを軽くしたい、安心したい」と始めた投資が原因で、お金のことで頭がいっぱいになり、精神的に追い詰められていった加藤さん。――まさに本末転倒の状態です。
「毎日スマホばっかり見て、不安で胸がいっぱいなんて。いったい俺は、何をやってるんだ。こんなことなら、始めないほうがよかったんじゃないか……」

