青天の霹靂…妻から突きつけられた「三行半」
封筒を開けると、一枚の名刺が目に飛び込んできました。
「弁護士」
予想だにしない展開に、顔がみるみる青ざめていきます。ニュースや、会社でのトラブルならまだしも、まさか自分の家庭でみるはずのない肩書。山崎さんは一瞬、呼吸を忘れたように固まってしまいます。そして、名刺が貼られていた手紙には、次のようなことが書かれていました。
「仕事を優先して家庭を顧みなかったこと、人格を否定するような言葉を浴びせられたことを、決して忘れることはできません。私は自分の人生を犠牲にして、これまで家庭を守り続けてきました。もう限界です。ここには帰りません。今後の離婚協議や財産分与の手続きについては、すべて私の代理人である弁護士を通して進めます。私への直接の連絡や実家への訪問は、固くお断りいたします」
そこには、妻が長年抱えてきた苦しみと、子どもたちには何年も前から相談していたこと、今後は実家の母の面倒をみながら暮らすつもりであることが綴られていました。
自分の手が小刻みに震えていることがわかります。何度も読み返しましたが、やはりこれは妻からの三行半のようです。山崎さんは、しばらくソファから動くことができませんでした。
仕事も家族も失い、広い家に残された“孤独感”
後日、弁護士から正式な書面が届きました。そこには、結婚後に築いた財産約8,000万円の半分を財産分与として請求すること、婚姻期間中の厚生年金(年金の2階建て部分)の半分にあたる月額にして6万円ほどの金額を分割して受け取る手続きに応じるよう、記されていました。
妻に対して負い目もあり、山崎さんは争うことなく受け入れることに。しかし、仕事と家族という自身を支えていた二本柱がなくなった途端、自分の人生が驚くほど空っぽだったことに気づかされました。
仕事では大勢の部下を動かし、多くの人と関わってきたものの、腹を割って話せる友人はほとんどいません。ゴルフ仲間も酒席の知人も、結局は仕事で繋がっていただけです。
「これからはあいつと二人でゆっくりしようと思っていたのに。こんなことなら、まだ会社で必要とされる人生のほうが、いくらかマシだったのか……」
広いリビングにひとり座りながら、山崎さんは今後の人生を考えるのでした。


