「ちょっと遊ぶだけ」のつもりで…男性が始めた“退屈しのぎ”
浩一さん(仮名・73歳)は、5年前に大手メーカーを定年退職しました。持ち家で住宅ローンは完済済み。貯蓄も潤沢で、夫婦の年金収入は月22万円ほどありました。
妻の和子さん(仮名・70歳)と二人暮らし。子どもたちは独立し、夫婦は「これからは好きなことをして過ごそう」と話していたといいます。
しかし、退職後しばらくして、浩一さんは強い孤独感を抱くようになりました。毎朝決まった時間に出社し、部下と話し、取引先と会う――そんな生活が突然なくなったのです。
「最初の半年くらいは良かったんです。でも、だんだん時間を持て余すようになって」
そんなある日、元同僚から連絡が入りました。
「暇なら競馬でも行かないか」
最初は軽い気持ちでした。数千円賭けて、レースを見ながら雑談する。負けても「まあ遊びだから」で済む金額でした。
「久しぶりに、“何かに熱中している感覚”があったんです」
その後、浩一さんは一人でも競馬場へ行くようになります。スマートフォンで簡単に馬券が買えるようになったことで、自宅でもレースをチェックする生活に変わっていきました。
最初は月数万円程度だった支出も、少しずつ増えていきます。
「次は取り返せる」「今日は流れが来ている気がする」
そう考えるようになっていたといいます。
当初、和子さんは気づいていませんでした。しかし、ある日、通帳の残高を見て異変に気づきます。
「なんでこんなに減ってるの?」
問い詰めると、浩一さんは「投資みたいなものだ」と言い訳しました。ですが実際には、数年間で数百万円単位の損失が出ていました。
浩一さんは損失を取り戻そうとして、さらに賭け金を増やしていたのです。一時はネット競輪やカジノ関連の情報にも手を出し始め、夜中までスマホを見続ける生活になっていました。
和子さんは、夫の変化に恐怖を感じたといいます。
「以前は堅実な人でした。現役時代は家計にも厳しかった。それなのに、“まだ大丈夫”って言いながらお金を使い続けるんです」
