特養入所で「終わったと思った」介護生活
加奈子さん(仮名・52歳)は、夫の母・芳枝さん(仮名・76歳)を半年ほど前に特別養護老人ホームへ送り出しました。
芳枝さんは年金月13万円。数年前から認知症の症状が進み、転倒も増えていました。要介護3の認定を受けてからは、自宅での生活が難しくなり、加奈子さんが中心になって介護を担ってきたといいます。
夫は仕事が忙しく、平日の通院やケアマネジャーとの連絡、薬の管理はほとんど加奈子さんの役割でした。
「義母のことが嫌いだったわけではありません。でも、毎日続くと、自分の生活がなくなっていく感じがありました」
夜中に起き出して転倒しそうになる。冷蔵庫を何度も開ける。デイサービスを嫌がる日もある。加奈子さんは、気の休まらない日々を送っていました。
ようやく特養への入所が決まったとき、正直なところ、ほっとしたといいます。
「これで眠れるようになる。そう思いました」
特別養護老人ホームは、要介護高齢者の生活施設です。厚生労働省の資料でも、特養は入浴、排せつ、食事などの日常生活上の介護、機能訓練、健康管理、療養上の世話を行う施設とされています。また、平成27年以降、新規入所者は原則として要介護3以上とされています。
芳枝さんは個室ではなく多床室に入り、費用は年金内でほぼ収まる見込みでした。足りない月は、夫婦が数万円を補う程度です。
「お金の負担はありましたが、在宅介護の限界を考えれば、お願いするしかありませんでした」
入所後しばらくは、落ち着いているように見えました。職員からも「食事は取れています」「夜間も大きな問題はありません」と報告を受けていました。
加奈子さんも、少しずつ自分の生活を取り戻し始めます。ところが、半年ほど経ったころ、施設から一本の電話が入りました。
「今後の対応について、ご家族で一度お話ししたいことがあります」
その言葉に、加奈子さんは胸騒ぎを覚えました。
