「ようやく入れたのに」…半年後に突きつけられた現実
施設で説明されたのは、芳枝さんの体調変化でした。
誤嚥性肺炎を繰り返し、食事中のむせ込みが増えている。夜間の痰の吸引が必要になる可能性もある。今後、医療的な対応が増える場合、現在の施設で継続して受け入れられるかは慎重に判断する必要があるというのです。
「え、特養って最期まで見てもらえるんじゃないんですか」
加奈子さんは、思わずそう聞き返しました。
もちろん、特養でも看取りに対応する施設はあります。しかし、すべての医療行為に常時対応できるわけではありません。厚生労働省の資料によると、特養では健康管理や療養上の指導のために必要な医師配置が求められていますが、看護職員が24時間勤務している施設は限られ、夜間はオンコール対応が中心とされています。
つまり、生活介護の場である特養と、医療機関は同じではないのです。加奈子さんにとって、それは「あり得ない事態」に思えました。
「ようやく入れたのに、また次を探すの? そう思いました」
さらに、入院が長引いた場合には、施設に戻れるかどうかの問題もあります。特養は生活の場である一方、医療的な状態が大きく変われば、療養型の医療機関や介護医療院など、別の選択肢を検討せざるを得ないことがあります。
加奈子さんは、夫とともにケアマネジャー、施設相談員、医師の説明を受けました。今後は嚥下状態を確認し、食事形態を変更すること、必要に応じて入院や転院先を検討することになりました。
「正直、施設に入ったら家族の役目はかなり減ると思っていました。でも、判断する場面は何度も来るんですね」
厚生労働省『令和6年 介護サービス施設・事業所調査の概況』によると、介護老人福祉施設の定員は約60.4万人で、利用率も高い水準にあります。特養は多くの要介護高齢者を支える重要な施設ですが、入所後も状態の変化に応じた医療・介護の調整は欠かせません。
現在、芳枝さんは施設で食事形態を変えながら様子を見ています。加奈子さんは、以前ほど日々の介護に追われることはなくなりましたが、緊急連絡が来るたびに心臓が縮むような思いになるといいます。
「特養に入れたら安心。それは間違いではないと思います。でも、“全部終わる”わけではなかった」
在宅介護から施設介護へ移っても、家族の葛藤は形を変えて続きます。加奈子さんが突きつけられたのは、「介護には終わりが見えにくい」という現実でした。
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