「実質利回り」で考える、国民年金を払った場合の損益分岐点
Aさんのように過去2年分を追納し、来年36歳から60歳までの24年間、さらに「任意加入」で65歳までの5年間、きっちり納付したとします。最新の2026年度基準(年金満額約84万円、月額保険料1万7,920円)で計算してみましょう。
直近2年の追納分と、これからの29年間で支払う保険料総額の合計は約667万円です。これに対し、受け取れる年金額は年間約65万円(一生涯)となります。
国民年金の保険料は「全額が社会保険料控除」です。所得税・住民税の合計税率を30%と仮定すると、667万円を支払うことで「約200万円の税金が安くなる」計算になります。
実質的な手出し(コスト)は約467万円に下がり、毎年約65万円が入ってくるため、「受給開始からわずか約7年(72歳)」で元が取れます。さらに月額400円の「付加年金」を上乗せすれば、増額分はたった2年で回収可能です。
拠出した時点で30%のリターン?「iDeCo」と「小規模企業共済」の節税効果
年金のベースを作ったうえで活用すべきは、差し押さえ対象外の「iDeCo」と、貸付制度があり事業の資金繰りにも使える「小規模企業共済」です。
個人事業主の特権として、iDeCoは年間最大81.6万円、小規模企業共済は最大84万円、合計で「年間165.6万円」まで拠出可能です。これらも全額所得控除になるため、税率30%の人が満額拠出すれば年間約50万円もの税金が安くなります。
これは投資の世界でいえば、「資金を拠出したその瞬間に、ノーリスクで30%の運用利回り(リターン)が確定した」のと同様の節税効果を持つ、まさに制度の大きな恩恵です。NISAには、拠出時のこの節税効果がありません。
「でもiDeCoは将来受け取るときに課税されると聞きました」と心配する人がいますが、実はAさんの場合はそれが有利に働きます。
iDeCoや小規模企業共済を年金形式で受け取る際、「公的年金等控除」という非課税枠が使えます。Aさんは過去に未納期間があるため、将来もらえる国民年金額が満額の人よりも少なくなります。
つまり、公的年金等控除の枠に大きな「空き」が生じるため、iDeCoで積み立てた資金をその空き枠にスッポリと収めやすいです。
「退職所得控除」が使える一時金受け取り(一括)と「公的年金等控除」が使える年金受け取りをうまく併用すれば、非課税で受け取れる可能性が高いのです。
