「NISAで挽回するしか…」年金未納に焦る35歳経営者
「独立したてのころは、明日の材料費を捻出するだけで精一杯でした」
Aさん(35歳・男性)は、25歳で独立し、洋菓子店を立ち上げました。地道な苦労が実を結び、ここ数年はSNSでの口コミ効果もあって業績は絶好調。ようやく経営が軌道に乗り、手元にまとまった資金が残るようになりました。
しかし、資金的な余裕が生まれてふと立ち止まったとき、大きな不安がAさんを襲いました。
「若いころから余裕がなくて、お恥ずかしい話、国民年金はずっと未納でした。自分の老後には、公的年金がほとんどないのではないか……?」
危機感を抱いたAさんは、「今から挽回するためには、未納の年金は諦めて、最近話題のNISAを満額やったり、民間の個人年金保険などにたっぷり加入して運用したりしたほうがいいはず」と決意します。
会社員とは異なるルール…経営者が知っておくべき「資産差し押さえ」のリスク
しかし、老後の資金形成について調べていくうちに、Aさんは会社員と経営者では「資産防衛」の絶対ルールが違うという現実に直面しました。
独立して事業を営む経営者には、特有のリスクが存在します。それが「事業失敗による財産差し押さえ」です。万が一、事業が傾き自己破産などを余儀なくされた場合、NISA口座の株式や、民間の生命保険(解約返戻金)は、全額差し押さえの対象となります。
老後のためにNISAで積み上げた数千万円が、事業のつまずきとともに一瞬で消え去ってしまうのです。
だからこそ、経営者の老後資金は「法律で差し押さえが禁止されている場所(=年金受給権)」で作るのが絶対の鉄則だと知ったAさん。
「でも、過去10年の未納分はどうにもならないですよね……」
年金の仕組みをさらに調べたAさんは、手続きを放置した「未納」と、正式な手続きを踏んだ「免除・猶予」の決定的な違いに愕然とします。
もし苦しい時期に「免除」や若年者向けの「納付猶予」を申請していれば、過去10年前まで遡って追納ができ、現在の利益で一気に年金を満額に近づけることができました。さらに全額免除であっても、将来の年金額には1/2が国費から反映されます。
しかし、ただの「未納」にしてしまうと、遡って追納できるのは「直近2年分」のみ。残りの8年間は白紙となり、1円も反映されません。
「もっと早く知っていれば……」
Aさんは後悔の念に駆られながらも、まずは現在の利益で直近2年分(約43万円)を一括で納める決断をしました。全額が社会保険料控除となり、今年の税金を大きく減らしながら将来の年金額を即座に引き上げられるからです。
