これだけは気をつけて!…雇用調整助成金の注意点
(1)クーリング期間の存在
雇用調整助成金はずっと申請できるわけではありません。1つの対象期間の満了後、再び本助成金を受給する場合、1年間以上空けないと、新たな対象期間を設定することができません。
(2)自主的な出勤も、ボランティアもNG!
休業日の自主的な出社、「ボランティア」や「修行」等の名称をした出勤は実態として休業しているものと認めることは困難であることから、助成対象となりません。
(3)残業しながらの休業は相殺
休業・教育訓練を実施した判定基礎期間内に、休業等を行った労働者が残業や休日出勤を行っていた場合、対象労働者の残業や休日出勤の時間相当分が助成額から相殺されます。
(4)不正受給に陥りやすい側面やデメリットも…
コロナ禍で6兆3,000億円もの申請があった雇用調整助成金ですが、2020年4月から2025年12月までの事後調査では約1,900件、600億円以上の不正が発覚しています(『「雇用調整助成金」不正受給 鈍化も累計1,889件に 最多は愛知県の294社、倒産発生率は通常の24.3倍』東京商工リサーチ、2026年1月30日)。
自主的に返納したものも含めると金額はより大きくなり、前項にも触れたとおり、自主的な出勤と称して仕事をさせる、休業という形をとりながらリモートワークをさせる、タイムカードを改ざんするなど、申請件数の多さに比例して不正の側面もみられました。
また、助成金があるからと休業を長引かせると、従業員のモチベーションの低下、働かずとも給与は一定支給されるというマインド、将来に不安を感じた従業員から退職が相次ぐという可能性もあり、直近のコロナ禍でも筆者自身が感じたリスクでした。
(5)今後要件緩和があるか注視すること
リーマンショックや震災、コロナ禍では、上記に挙げた売上高等の減少、助成対象となる上限日数、クーリングオフ期間、残業との相殺といった様々な条件やルールが一時的に緩和されました。
今後の中東・イランの情勢次第でこれらの要件が緩和される可能性もあります。経営者だけでなく働くすべての人に影響のある措置になります。
まとめ
雇用調整助成金は、会社が儲かる制度ではありません。雇用の維持が目的であるとともに、助成金はその文字のとおり、会社でなんらかの施策を〈成〉すために〈助〉けてくれる〈お金〉です。
筆者の顧客の経営者は「せっかくコロナから立ち直ったのに…」と溜息混じりで漏らしていましたが、総務省の『労働力調査(基本集計)』の資料にもあるように、雇用者数48ヵ月連続増加、完全失業率約2.5%程度で安定していた実情が揺らがぬよう、政府の柔軟な対応を期待したいところです。
山本 達矢
社会保険労務士法人WILL
代表社労士
特定社会保険労務士
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