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過去最多を更新中の「人手不足倒産」だが…
東京商工リサーチによると、2023年の「人手不足倒産」は過去最多の289件に上り、前年比81.7%増という急増ぶりを見せました。なかでも、建設業、運輸業、飲食・サービス業といった労働集約型業種での倒産が目立ちます。
なぜこれほどまでに人手不足が企業の存続を脅かしているのでしょうか? そして、なぜ多くの中小企業経営者が、その危機に気付けず、対策を打てないまま倒産へと追い込まれてしまうのでしょうか?
その原因を探ると、「経営者自身が見落としている致命的な問題点」がいくつも浮かび上がってきます。
致命的な勘違い①:「採用難は業界の責任」と思い込む
多くの経営者は「この業界はどこも人が採れない」と嘆きます。確かに労働人口は2022年の6,902万人から、2030年に6,556万人と、いまより約5%程度減少すると予測されるなか(独立行政法人労働政策研究・研修機構「2023年度版 労働力需給の推計―労働力需給モデルによるシミュレーション―」)、厚生労働省の「一般職業紹介状況」(令和7年3月)によれば、全産業の有効求人倍率は1.26倍と、依然として求職者よりも求人のほうが多い状況です。
業種別に見ると、とくに建設業(5.11倍)、介護サービス(3.81倍)、運輸業(2.66倍)など、特定業種では人材確保が困難であることが浮き彫りになっています。しかし、同業他社のなかには、求人難だとただ諦めることなく、着実に人材を確保して成長している企業も存在します。
そんな企業の働き方や採用方法について見ていきましょう。
◆労働条件の見直しと明示化
1.完全週休2日制、週休3日制の導入検討
とくに中小企業では、いまでも「隔週休日」や年間休日100日未満が多く、完全週休2日制や、年間休日の多さは強いアピールポイントになります。まずはしっかり休める体制を構築しつつ、価値観やライフステージの変化で「もっと働きたい」「しっかり稼ぎたい」という方には相応の業務量と報酬を用意するのもひとつです。
2.残業時間の抑制と実績の数値化
求人票の多くに「月平均残業時間〇〇時間」という記載がありますが、実態と異なっている場合もあり、信頼度の低い数字だと思われているケースもあります。たとえば「全産業平均や業界平均と比べて多いのか、少ないのか」「残業を減らすためにどのような目標を掲げ、どう取り組んでいるのか」など、数字だけでなく、その背景にある実情や取り組みまで詳細に記載することで、求職者の目に留まる信頼度の高い数字になるでしょう。
3.給与水準の地域相場以上の設定
この2~3年の最低賃金の上昇で、月給換算でも8,000円~9,000円程度、賃金が上昇しています。数年前の求人票を再掲載しても求職者が集まるはずもありません。業界平均と比べて低いのか高いのか、人手不足を解消するには自社だけでなく他社の相場や動向も分析するなどして、対応する必要があります。
致命的な勘違い②:「職場の魅力」の具体的な指標がない
「ウチは人間関係がいいから」「当社はアットホームが魅力」と語る社長が多いですが、数字や外部からの評価でその魅力を定量化・定性化できていないことも問題です。
・離職率(1年以内に退職する従業員の割合)
・社員満足度調査(ES調査)
・月平均残業時間や有給取得率
・男女別の育児休業や介護休業の取得率
これらの指標を経営目標として掲げ、社内外に公表するのもひとつです。社長が思う「この会社で働く理由」と、従業員が思う「この会社で働く理由」が、実はまったく違っていたりもします。「ヒト・モノ・カネ」という3大要素において、「ヒト」という終わることのない課題に真剣に取り組む会社が年々増えています。
致命的な勘違い③:従業員の「成長ストーリー」に無関心
最近の若手社員は「この会社でなにができるか」も非常に重視しています。給与や労働時間とともに、キャリアビジョンの有無が選択のカギになることも少なくありません。
株式会社学情が実施した調査によると、20代の「第二新卒」における転職理由は「もっとやりがい・達成感のある仕事がしたい」という意見が最も多く35.0%を占めており、これは給与(32.9%)や残業減や休日の確保(26.4%)を上回っています。生成AIに代表されるテクノロジーの台頭で「○○後になくなる職業」という特集を見かけますが、いまの経営者よりも20代のほうが、より危機感をもって自身のキャリアや技術に敏感になっている印象があります。
「数年後に○○の業務に就ける」「資格支援制度がある」といった中長期的な成長モデルを示せない企業は、若手から敬遠されやすくなります。
致命的な勘違い④:よい意味での「業務の属人化」ができない
長年のベテラン社員にありがちな「○○の業務は××さんが辞めたら回らない」という業務の属人化は問題ですが、「○○の業務は、若手社員の××さんがいちばんよく知っている」という、ある程度の負荷と偏重は、若手社員の成長とやりがいに大きく寄与します。
新人が入っても、忙しすぎてだれも仕事を教えずにひたすら席に座っているだけ、退職を恐れてだれでもできる仕事しか任されない…という環境は若者の目には「ホワイトな職場」ではなく、「無色(無職)な職場」に映る可能性もあります。
致命的な勘違い⑤:昔のままの「採用基準」で採用しようとする
社労士として労務相談を受けるなかで、労使トラブルに陥る第一歩はやはり、採用基準が下がることにあります。採用を焦るあまり、適性を十分に判断しないまま内定を出してしまう、労働条件を曖昧にしてしまう…といったことが、あとあとトラブルの原因になる事例も多いのです。
一方で「若い人でないとこの仕事はできない」「男性でないとこの業務はむずかしい」といった凝り固まった価値観では、いつまで経っても人手不足を解消することはできません。業務やフローの分解は、国籍・性別・年齢といった基準を広げるきっかけにもなります。
まとめ
「人手不足倒産」は、確かに外部環境も大きな要因ですが、自助努力で打開を図る会社も多く存在します。そもそも経営者の「雇ってやっている」という古い価値観こそが、人手不足の根本的な問題点です。
経営者と従業員とは、上下関係でもなければ対立関係でもありません。収益拡大と処遇の改善という好循環を作り出す協力関係であるはずです。
いまこそ、自社の採用力・魅力・教育体制・給与水準・ビジョンの有無を点検し、経営者自身の価値観を見直すことで競合他社よりも一歩先をいく採用・定着の戦略を検討してはいかがでしょうか。
山本 達矢
社会保険労務士法人WILL
代表社労士
特定社会保険労務士
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