退職給付金、増やせます。甘言を並べた「SNS広告」のウラ側で…退職者を狙う「申請サポート」の深刻トラブル【社労士が警告】

退職給付金、増やせます。甘言を並べた「SNS広告」のウラ側で…退職者を狙う「申請サポート」の深刻トラブル【社労士が警告】
(※写真はイメージです/PIXTA)

近年多発する「退職給付金や失業保険の申請サポート」トラブル。国民生活センターは2025年12月3日、「失業保険の給付額を増やせるとうたう申請サポート」に対する異例の注意喚起を行いました。退職給付金や失業保険の「申請サポート」とはなにか、その正体と危険性を見ていきます。特定社会保険労務士の山本達矢氏が解説します。

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国民生活センター、急増するトラブルを背景に「注意喚起」

長年勤務した会社を離れるとき、きっと多くの人は「少しでも多くの手当を受け取りたい」と考えるのではないでしょうか。近年、そんな心理を巧みに突いた「退職給付金や失業保険の申請サポート」のトラブルが多発しています。

 

国民生活センターは2025年12月3日、相談件数が前年度比2.4倍と急増したことを受け「失業保険の給付額を増やせるとうたう申請サポート」に対する異例の注意喚起を行いました。ここでは、退職給付金や失業保険の申請サポートの実態とリスクについて見ていきます。

巧妙な勧誘…「退職給付金」という言葉の誤認

まず注意すべきは、彼らが使う言葉の定義です。広告などでは「退職給付金」や「退職コンサル」「申請サポート」という名称が使われますが、「退職給付金」という公的制度は存在しません。その実態の多くは、会社から支払われる退職金ではなく、「雇用保険(失業保険)の基本手当」の受給期間が長くなる特定理由離職者や特定受給資格者への認定を狙ったりするものです。

 

SNSやネット広告では、以下のような魅力的なキャッチコピーが並びます。

 

●「独自のノウハウで受給額を数百万円増やせる」

●「自己都合退職でも、すぐに給付が受けられるようにサポート」

●「退職後の生活費を最大化するシークレットな方法」

●「国が作った神制度、退職給付金」

 

これらは、制度をよく知らない退職者にとって「知らなければ損をする魔法のノウハウ」のように見えてしまいます。しかし、ここには重大な落とし穴が隠されています。

 

◆国民生活センターが挙げた「3つのトラブル事例」

【事例1】

失業保険の申請サポート契約をしたが、事業者が言っていたような給付金がもらえなかったので、サポート費用を支払いたくない

 

インターネットで失業保険の申請サポートをしてくれる事業者を知り、 Web会議で面談をした。そのなかで「社会保障制度を利用すれば最大200万円の失業保険が受給できる。その申請をサポートする」と言われ、約30万円の申請サポート契約を申し込んだ。

 

その後、事業者から教えられたとおりの手順で失業保険の申請を行ったが、事業者が言っていたような給付金はもらえなかった。事業者からサポート費用の請求を受けているが、事前の説明と異なり、失業保険がもらえないなら支払いたくない。

 

【事例2】

失業保険の申請支援をうたう事業者と契約した後、解約を申し出たら高額な違約金を請求された

 

退職を考えていた時に、インターネットで失業保険をもらえる期間が長くなり金額も増やすことができるというサイトを見て登録した。Web会議で説明を受けて契約し、サポート費用として約20万円を振り込んだ。その後、状況が変わり退職しないことになったため、解約を申し出たところ、サポート費用の大部分が違約金になると言われた。

 

まだ何もサポートを受けていないにもかかわらず、高額な違約金を取られることに納得できない。

 

【事例3】

失業保険のサポートをうたう事業者と契約したが、詐欺にならないか不安

 

SNSで失業保険のサポートをする事業者を知った。退職を考えていたため登録した後、話を聞いたところ、「最短で1か月後には傷病手当が出て、失業給付も10か月間に延長できるようにサポートする」と言われ、サポート費用として約20万円をクレジットカードで支払った。

 

翌日、サポート内容について説明を受けたが、退職日までに事業者が指定したオンライン診療のメンタルクリニックを受診し、うつ病との診断を受けたら、すぐに仕事ができないという内容の書類をハローワークに提出する、というものだった。うつ病と診断されるためのマニュアルも送られてきた。私はうつ病ではないと思う。このようなやり方は詐欺にならないか。

相談事例から見えてくる「問題点」

①広告や勧誘に「過度な期待」や「誤解」を招く表現が用いられていることがある 

 

相談事例では「最大200万円の失業保険が受給できる」など、申請サポートを利用すれば高額の給付が受けられるかのような、過度な期待や誤解を招く広告や勧誘がなされているケースがみられます(事例1、3)。

 

しかし、失業保険の給付は、あくまでもハローワークによる審査を経て、退職理由だけでなく年齢や勤続年数など個別の状況に応じて決定されるものであり、サポートを受ければ誰でも一律にもらえるというものではありません。業者のサポートに従って申請をしても、思ったような給付金が受け取れないこともあります(事例1)。

 

また、失業保険などの労働及び社会保険制度に関する申請書等の作成や提出を、報酬を得て代行できるのは、法律で定められた社会保険労務士(社労士)に限られます。業者が行えるのは、あくまで助言に限られるはずです。ハローワークでは申請手続について無料で相談や案内を受けることができるため、通常、こうしたサポートをうたう業者を利用しなくとも自分自身で手続を行うことが可能です。

 

②契約後に解約を求めても「高額な違約金の請求」や「解約の拒絶」をされることがある

 

一度契約をしてしまうと、その後にサポートが不要になり解約を求めても、サポートを受ける前であっても高額な違約金を請求されたり(事例2)、業者が解約に応じなかったりすることがあります。

 

③不正受給を促すかのような申請サポートになっているケースがある 

 

給付額や受給期間を増やすために、うつ病の診断を受けるためのマニュアルを渡されたり(事例3)、医師やハローワークに伝える内容を逐一指示されたりするなど、実際の状況とは異なる虚偽の内容での申請を促すケースもあります。 虚偽の内容で申請して失業保険を不正受給した場合には、受給した金額の最大3倍に当たる金額の返金・納付を命じられる、詐欺罪等として刑事罰の対象となるなど、申請者自身が責任を問われることになります。

社労士の筆者、業者のサイトにアクセスして困惑

筆者自身、業者のサイトにアクセスして簡単なアンケートに2、3問答えたところ、失業保険の概算値が表示(その概算値も実際とは大きく異なる金額)されました。

 

最後に「眠れないことがある、会社に行くのがつらいことがありますか?」という設問に「はい」と答えると、受給額が一気に約4倍に跳ね上がり、「診断の結果、あなたは失業保険を増額できる条件にあてはまります」とオンライン面談の案内を受けました。

 

眠れないことや、会社に行くのがつらいことなど誰にでもあるでしょう。そんな設問1つで受給額が跳ね上がり、簡単に「増額できます」と案内されることに、強い違和感を覚えました。

「処罰を受けるのは自分自身」と肝に銘じて

もし不正受給が発覚した場合、厳しいペナルティが課せられます。

 

●支給停止:以降の給付が一切受けられなくなる

●返還命令:不正に受け取った金額をすべて返還しなければならない

●納付命令:不正受給額の最大「2倍」に相当する金額をさらに納付させられる。つまり、返還命令分を合わせると受け取った額の3倍を支払う義務が生じる

●刑事罰:悪質な場合は詐欺罪として告発される可能性もある

 

最終的な責任と支払いはすべて申請者本人が負うことになります。「知らなかった」「事業者に言われた通りにした」ではすまされません。

社労士が伝えたい「正しい手続き」

雇用保険の制度は、法律(雇用保険法)によって受給資格、金額、期間が明確に定められています。そこに「裏技」や「特別なノウハウ」は存在しません。

 

●ハローワークは「味方」です

手続きについて不安があれば、管轄のハローワークへ行きましょう。窓口では無料で丁寧に説明が受けられます。

 

●専門家に相談を

社会保険や雇用保険の制度全般の相談や手続きを代行できるのは、社会保険労務士や弁護士といった専門家だけです。無資格のコンサルタントが有料で申請を代行したり、具体的な書き方を指示したりすることは、社会保険労務士法違反の可能性もあります。

 

失業保険は、次のステップへ進むための大切な資金ですが、その原資は雇用保険料や国庫負担を含めた公金です。一時の「受給額を増やしたい」という誘惑に負け、それまでのキャリアを台無しにするようなリスクを冒してはいけません。

 

お金は善悪の判断を鈍らせますが、正しい情報・知識こそがあなたの大切な財産を守る唯一の手段です。

 

 

山本 達矢
社会保険労務士法人WILL
代表社労士
特定社会保険労務士

 

 

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