「このままでは無理だ」…崩れ始めた家計と関係
転機となったのは、正一さんが通帳を見直したときでした。
「定期預金を一部崩したんですが、その減り方が想像以上だったんです。“このままじゃ持たない”と初めて実感しました」
貯蓄は、子どもたちの教育費や住宅の修繕費を経ても、老後に備えてある程度は残していたはずでした。しかし、同居が始まってからの数年で、想定以上に減っていたのです。
「正直に言うと、“娘を養うための年金になっている”と感じてしまって…」
そう口にしたとき、正一さんは自分でも驚いたといいます。本来であれば、夫婦の生活と将来のために使うはずの年金。それが、別の形で消えていく現実に、ようやく向き合った瞬間でした。
その後、夫婦は咲江さんと話し合いの場を持ちました。
「“このままでは生活が続けられない”と伝えました。強い言い方になってしまったかもしれません」
しかし、咲江さんの反応は予想外のものでした。
「“そんなに負担だと思ってたの?”と言われてしまって…。こちらの感覚と、向こうの認識がまったく違っていたんです」
長年、生活費について具体的な話をしてこなかったこともあり、親の負担がどれほどのものか、娘には十分に伝わっていなかったようでした。
話し合いの結果、咲江さんは短時間のアルバイトを始めることになりました。また、食費の一部を負担する形にし、家事も分担するルールを決めたといいます。
「正直、もっと早く話すべきでした。遠慮や気遣いが、かえって状況を悪くしていたんだと思います」
それでも、完全に問題が解決したわけではありません。
「将来の不安は消えません。もし自分たちに介護が必要になったら、このままで大丈夫なのか、とか」
高齢期の同居は、支え合いにもなりますが、バランスを崩せば双方にとって負担になります。「家族だから」という前提に甘えたままでは、問題は見えにくく、解決も遅れがちです。
「娘を責めたいわけではないんです。ただ、現実として、このままでは続かないということを、ちゃんと共有しないといけなかった」
崩壊は、ある日突然起きたわけではありません。見て見ぬふりをしてきた違和感が積み重なり、「家族だから」と先送りしてきた問題が、静かに生活を蝕んでいたのです。
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