相続直前に約14億円のマンション購入…節税目的が疑われた判例
ここからは、実際の判例(令和4年4月19日判決)をもとに考えてみましょう。納税者側は「相続税評価額」、税務署長側は「不動産鑑定評価額」をそれぞれ主張して争われたケースです。
被相続人Aさんは、90歳~91歳の頃、東京都杉並区と神奈川県川崎市にマンション(土地、家屋)を購入し、約3年後94歳で死亡しました。詳しい状況は下記6(1)のとおりです。
6.最高裁判決(令和4年4月19日)
(1)相続開始日(平成24年6月17日)前の約3年前に購入したマンション(土地、家屋)
①購入金額
8億3,700万円(杉並区)+5億5,000万円(川崎市)=13億8,700万円
②当初借入金
6億3,000万円(杉並区)+4億2,500万円(川崎市)=10億5,500万円
③財産評価基本通達に基づくマンションの相続税評価額(原告:相続人Bさん)
2億4万1,474円(杉並区)+1億3,366万4,767円(川崎市)=3億3,370万6,241円
④不動産鑑定士によるマンションの不動産鑑定評価額(被告:税務署長)
7億5,400万円(杉並区)+5億1,900万円(川崎市)=12億7,300万円
(注)川崎市のマンションは、平成25年3月に5億1,500万円で売却されている。
吉田課長「Bさんは、相続税の節税目的でAさんにマンションを買わせたのですか?」
はい、そのとおりです。杉並区のマンション購入時、銀行から6億3,000万円を借り入れており、銀行の貸出稟議書には「相続対策のため不動産購入を計画。購入資金につき、借入れの依頼があったもの。」と明記されていました。つまり、相続税対策としてマンションを購入したということです。
また、90~91歳で合計13億8,700万円(借入金10億5,500万円)もの不動産投資を行うのは、普通の投資行動としては考えにくい状況です。
吉田課長「なるほど。たしかに、Bさんが主張する相続税評価額による評価が認められれば、相続税の課税対象額は大幅に減りますね」
はい。ざっくりした計算になりますが、約10億5,000万円減ります(上記6(1)①13億8,700万円-同③3億3,370万6,241円)。
しかも川崎市のマンションは、相続開始日以後1年以内に購入金額の5億5,000万円と同程度の5億1,500万円で売却されており、市場価格が安定していたことがわかります。
ところが、相続税評価額は約1億3,000万円しかありません。市場価格(5億円台)と相続税評価額(1.3億円)に大きな差があるため、税務署長は「通達評価では適正な時価を反映していない」と判断しました。
そこで、税務署長は、「不動産鑑定評価額」を用いて2つのマンションの評価額を修正する行政処分(更正)を行いました(3億3,370万6,241円→12億7,300万円に増額)。
これを不服としたBさんは、裁判を起こしました。

