相続税の計算においては、財産の「時価」をどのように評価するかが重要です。しかし、所得税や法人税、消費税のように「取引相手が必ず存在する」税とは異なり、相続税は代金の授受がない無償取引です。そのため、どの価格を「時価」とみなすかについて客観的な基準がぶれやすく、紛争に発展しやすい税といえます。そこで今回は、実際の判例を取り上げながら、税理士が相続税における財産の「時価」評価の考え方と、裁判に発展しやすいポイントや実務上の注意点について解説します。
通達で適正な時価が判断できない場合は、「鑑定評価」を採用
吉田課長「税務署長も不動産鑑定評価額を用いることがあるんですか?」
はい。このような裁判で納税者の主張に対抗するために、不動産鑑定士へ鑑定を依頼する場合があります。
あるいは、納税者の相続税申告を審査する段階で、相続税評価額が適切な時価ではないと判断した場合です。不動産の評価額を増額する行政処分(更正)を行う際に、不動産鑑定評価額を用いることがあります。
吉田課長「税務署長は、財産評価基本通達に従って評価しなければならないのでは?」
原則はそのとおりですが、例外があります。それが下記5「財産評価基本通達の定めによりがたい場合の評価」(財産評価基本通達6)です。
5.財産評価基本通達の定めによりがたい場合の評価(財産評価基本通達6)
財産評価基本通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
具体的には、国税庁長官の指示を受けて、不動産鑑定評価額により行政処分(更正)を行うことになります。
多田雄司税理士事務所
所長
1972年3月慶應義塾大学経済学部卒業。77年12月税理士試験合格。79年1月多田雄司税理士事務所開業。
現在、租税訴訟学会副会長、日本税務会計学会学顧問、東京税理士会会員相談室相談員(面接担当、法人税)、東京税理士会大森支部相談員。
著書には、『外形標準課税の申告実務ガイド(税務研究会出版局)』、『法人税申告の実務全書(編共著、日本実業出版社)』、『合併・分割の会社法、会計、法人税の実務(税務経理協会)』、『詳解国際税務(共著、清文社)』などがある。
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