名義預金はどうする? 税理士の見解
税理士の見解は明快でした。母親の収入は年金が中心であるため、それを基準に資産形成を考え、それを超える部分については父親を原資とする「名義預金」として捉えるのが妥当、というものです。
その結果、母名義の預金約4,443万円のうち、約1,968万円を父親からの預り金(名義預金)として整理し、相続発生時には父親の相続財産に加算して申告する方針となりました。
また、Fさんの父親は過去の土地売却代金をそのまま預金として保有していることから、税務調査の対象になりやすい状況にあると考えられます。
こうしたなかで、母名義であることを理由にこれらの資産を考慮せず申告してしまうと、あとの税務調査で指摘を受ける可能性があります。その場合、追徴課税といったペナルティが生じることにもなりかねません。
だからこそ、生前のうちに「どこまでを名義預金として計上するか」を整理しておくことが重要です。このような“正直な相続設計”こそが、結果的に家族を守ることにつながります。
「名義預金」を回避するための3つのチェックポイント
ご家庭でも、まずは次の3つの点を確認してみてください。
そのお金を実際に稼いだのは誰か。
・管理・運用は誰がしているか
通帳、印鑑、キャッシュカードを誰が保管し、管理しているか。
・贈与としての認識があるか
あげる側ともらう側の双方に「贈与」の認識があり、契約書などで確認できる状態になっているか。
たとえば、父親が母名義の口座を作り、通帳や印鑑を自ら管理したうえで自分のお金を移していたのであれば、それは実質的には母名義の口座を「借りているだけ」の状態といえます。
Fさんのケースでも、父親と意思疎通ができるうちに、こうした資産管理の実態を整理し、名義預金を含めた正確な財産額を把握することに注力しました。
その結果、Fさんは「名義預金のことまで事前に整理できたことで、税務署が来たらどうしようという不安がなくなりました」と安堵されていました。
結びに:見えない財産こそ、生前に光を当てる
「家族だから、口座を分けていても問題ないだろう」――そんな思い込みが、後に大きなトラブルを招くことがあります。名義預金は、悪意がなくても「申告漏れ」とみなされるおそれがある、非常に注意すべき問題です。
相続設計とは、不動産のような目に見える財産だけを整理することではありません。こうした“名義のねじれ”を一つひとつ正していくことも、極めて重要な作業です。
そして、この整理ができてはじめて、資産の組み替えや納税資金の確保といった、次の具体的な対策へと進むことができます。Fさんがどのように土地を守る準備を進めていったのか、その全体像も見えてきました。
今回の重要ポイント
・名義預金は税務調査の対象になりやすい
専業主婦や子ども名義であっても、原資が被相続人のものであれば課税対象と判断される可能性があります。
・「預け金」としての計上が有効な対策になる
実態に即して名義預金を整理し、正しく申告に含めることが、結果的にリスク回避につながります。
・配偶者控除は戦略的に活用する
名義預金の存在を前提としたうえで、配偶者が相続する設計とすることで、納税額を適切にコントロールすることが可能です。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
