(※写真はイメージです/PIXTA)

地方移住は、生活費の安さや自然環境の豊かさから「老後の理想的な選択肢」として語られることがあります。一方で、交通や仕事など現実的な不安要素も多く、理想と実態のギャップが課題として指摘されています。

ここで老いていったら…夫婦が帰還を決めた“決定的な出来事”

転機は、移住から1年半ほど経った頃に訪れました。冬のある日、妻が体調を崩し、自宅で動けなくなったのです。

 

「すぐに病院に連れて行こうと思ったんですが、どこに行けばいいのか一瞬迷いました」

 

かかりつけ医もなく、夜間対応の医療機関も限られている。結果的には大事には至りませんでしたが、その出来事は大きな不安を残しました。

 

「もしこれがもっと深刻だったらと思うと、怖くなりました」

 

それまで感じていた違和感が、一気に現実の問題として突きつけられた瞬間でした。

 

「このままここで老いていくのか、と考えたときに、不安の方が大きくなってしまったんです」

 

その後、夫婦は何度も話し合いを重ねました。

 

「せっかく買った家だから、簡単に手放すのはもったいない」

 

「でも、安心して暮らせないなら意味がない」

 

最終的に、移住から2年後、都市部へ戻る決断をします。

 

「結局、戻ることになりました。最初は悔しさもありましたが、それ以上にほっとした気持ちの方が大きかったです」

 

現在は賃貸住宅で暮らしながら、医療機関や交通の利便性を重視した生活を送っています。

 

地方移住は、確かに魅力のある選択肢です。しかし、それがすべての人にとって最適とは限りません。生活コスト、交通、医療、コミュニティ――複数の要素が絡み合い、老後の暮らしの質を左右します。

 

「甘く見ていた、というのが正直な感想です。でも、やってみたから分かったことでもあります」

 

移住という選択は、やり直しがきかないものではありません。ただし、「理想」だけでなく、「現実に続けられるか」という視点が不可欠です。

 

「どこで暮らすかよりも、どう暮らせるか。それをきちんと考えておくべきでした」

 

 

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