憧れの別荘生活の裏にある「維持管理の地獄」
「年に数回遊びに行く分には最高なんです。でも、実際に所有して管理するとなると、まったく別の話になります」
そう語るのは、都内で夫と二人で暮らすRさん(60歳・女性)。Rさんは5年前、亡くなった父親から栃木県の那須高原にある小さな山荘を相続しました。父親が1980年代のバブル期前に約2,500万円で購入したもので、有名リゾート施設にも近い好立地でした。
定年を迎えた友人たちが「退職金が2,000万円入ったから、別荘でも買おうかな」と夢を語るたび、Rさんは複雑な思いを抱くといいます。なぜなら、別荘の維持管理がいかに過酷か、身を持って体験しているからです。
「まず、山の湿気を舐めてはいけません。梅雨から夏にかけては湿度が異常に高く、しばらく行っていないと部屋がカビだらけになります。到着してのんびりするどころか、まずは半日かけて大掃除をしなければなりません。布団を干して、床を磨いて。それだけで週末が終わってしまうこともありました」
敷地内に生い茂る雑草も、Rさんを悩ませます。自然豊かな環境ゆえに、少し放置しただけで腰の高さまで草が伸びるそうです。自分で刈るには限界があり、地元の業者に依頼すると毎回2~3万円の出費になります。
さらに、山荘の固定資産税や維持費などを合わせると、年間で約50万円の負担がのしかかります。
・別荘地の管理共益費:約15万円
・水道光熱費の基本料金や火災保険料など:約15万円
・年数回、業者に依頼する草刈りや清掃費用:約10万円
相続した山荘の最終的な行方
そして、最も過酷なのが冬場の管理です。那須高原の冬は厳しく、氷点下になる日が続きます。冬場は水道管の凍結を防ぐために、帰る前に必ず水栓を閉めて水抜きをするという面倒な作業が必要になるそうです。
「もし作業を忘れて水道管が破裂したら、とんでもない修理費用がかかります。寒さが厳しい12月から3月までは、怖くて別荘を使うことすらできません。体力的にも金銭的にも、もう無理です……」
Rさんは、これ以上の維持は体力面でも金銭面でも不可能だと判断し、山荘の売却を決意しました。不動産会社に査定を依頼したところ、売却価格はおよそ800万円。父親が購入した当時の金額には遠く及びませんでしたが、それでも手放せるならと安心したそうです。
そんな矢先、思わぬところから声がかかりました。Rさんの娘夫婦が「子どもたちと一緒に自然で遊びたいから、私たちがリフォーム費用を出して引き継ぎたい」と申し出たのです。
「どうしても」と娘夫婦に懇願されたので、贈与税の申告など手続きは必要でしたが、最終的には山荘の名義を移すことにしたそうです。
「別荘は本当のお金持ちか、よほどDIYや園芸が好きな人でないと務まらないと思います。私は管理から手が離れて、ようやく肩の荷が下りました」
