今回は、大家が自ら借主と「定期借家契約」を締結する方法を見ていきます。※本連載は、株式会社リーシングジャパン代表取締役、沖野元氏、不動産コンサルタント、林浩一氏の共著『賃貸の新しい夜明け』(週刊住宅新聞社)の中から一部を抜粋し、定期借家契約のメリットと定期借家契約を実際に活用する際のポイントを紹介します。

業者がいない場合、大家が事前説明書面と契約書を作成

下記の図は、定期借家契約の流れを説明しています。

 

大まかな流れを見ていきましょう。

 

 

まず契約締結時ですが、不動産業者を通す場合は「事前説明書面の交付と説明」を不動産業者に代理してもらうのが一般的です。業者を通さない場合は、事前説明書面と契約書を大家さん自らが作成し、事前説明書面の説明をしなければなりません。ここでの注意点としては、事前説明書面の交付と説明は契約締結前に行うということです。書類の作成については、本書『賃貸の新しい夜明け』の巻末にある書式集を参考にしてください。

 

中途解約についてですが、先に見たように定期借家契約では床面積が200㎡未満のものについては、家族の介護などやむを得ない場合に中途解約ができるとし、またそれ以外に特約がある場合には、その特約に従うとしています。実務のうえでは、借主からの解約は特約を設けて普通借家契約と同様に1ヶ月〜2ヶ月前に解約できるということにすることが多いです。

再契約をする場合は、新たな契約を締結し直す

忘れてはならないのが終了通知です。定期借家契約では、1年以上の契約だと期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に終了通知を送らなければなりません。管理委託をしている場合は、不動産業者がパソコンでその時期を管理していて、通知してくれるので心配はないでしょう。

 

その点、自主管理の場合はしっかりとカレンダーや手帳、パソコン等で管理しないとなりません。万一その時期に通知ができなかった場合は、その後通知をしてから6ヶ月後が契約終了の時期となります。ここでのポイントは、その終了通知に再契約の意思の有無を記載しておくことです。こちらも本書『賃貸の新しい夜明け』の巻末の終了通知の見本を参照してください。

 

続いて期間満了による契約終了は、図表のように2つに分かれます。明渡しの場合は、普通借家契約と変わらない処理で、そのまま終了通知を送るだけになります。再契約の場合は、終了通知を送ると同時に貸主として再契約の意思を伝え、借主からもそれを受けて再契約するかどうかを確認しておきます。

 

気をつけていただきたいのは、定期借家契約の再契約は普通借家契約の更新とは違うということです。定期借家契約では期間満了で契約はいったん終了するのです。ですから再契約というのは、言葉には「再」と付いていますが、新たな契約となるわけです。ということは、先ほどの定期借家契約の流れの図表にもあるように、契約締結に伴う作業を再度行う必要があるということになります。

 

事前説明書面の交付と説明や不動産業者に任せる場合は、重要事項説明書の交付と説明、そして契約書の作成と締結まできっちりと行うことになります。

 

 

補足ですが、東京都内の居住用物件の賃貸借契約の場合は、東京都賃貸紛争防止条例(東京ルール)の説明と書面の交付も義務付けられています。これは、不動産業者が間に入って再契約する場合は、重要事項説明と同様にその都度必要となります。また、連帯保証人を付けている場合は、連帯保証承諾書も再度取る必要があります。

本連載は、2015年8月刊行の書籍『賃貸の新しい夜明け』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

賃貸の新しい夜明け

賃貸の新しい夜明け

沖野 元,林 浩一

週刊住宅新聞社

長らく旧態依然としていたこの不動産業界にも、大きな波が来ています。人々のライフスタイルの変化による波が、住まい方の変化にも及んできています。 こうした時代の変化に、不動産業者も大家さんもついていくしかありません…

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