ドル円160円目前で急反落、過熱相場に揺らぎ?【今週の米ドル/円は157~162円と予想】

3月24日~3月30日の「FX投資戦略」ポイント

ドル円160円目前で急反落、過熱相場に揺らぎ?【今週の米ドル/円は157~162円と予想】
(※画像はイメージです/PIXTA)

米ドル/円は160円突破目前まで上昇したものの、19日には一転して2円超の急落となるなど、不安定な値動きが目立ちました。背景には、円売りポジションの積み上がりに対する反動に加え、日本当局による円安けん制や欧州の金融政策観測の変化といった複数の要因が重なっています。さらに、イラン情勢を受けた原油価格の高騰や米金利の上昇は、これまでドル高を支えてきた構図にも変化の兆しをもたらしています。マネックス証券チーフFXコンサルタント・吉田恒氏が、根拠とともに今週の米ドル/円の展開について予想します。

3月24日~3月30日の「FX投資戦略」ポイント

<ポイント>

・先週の米ドル/円は160円突破寸前まで上昇したが、一時157円台まで急反落する場面も。

・原油高などにより米利下げ見通しから一転利上げ見通しに変わるなど、イラン情勢の米景気への悪影響の懸念も強くなってきた。

・米ドル高、米ドル安の両サイドに振れやすい不安定な状況。今週の米ドル/円は157~162円で予想。

先週の振り返り= 米ドル/円は160円突破寸前まで上昇

19日に2円以上も米ドル急落=円売りポジション傾斜の反動も影響か

先週の米ドル/円はこの間の高値を更新し、160円突破寸前まで上昇しました。ただ19日に、2円以上と急落する場面がありました(図表1参照)。片山財務相による強い円安けん制や、この日開かれたECB(欧州中央銀行)理事会を受けて早期の利上げ観測が強まり、対ユーロで米ドル売りが拡大したことに連れた面もあったようです。

 

出所:マネックストレーダーFX
[図表1]米ドル/円の日足チャート(2026年1月~) 出所:マネックストレーダーFX

 

このように一時的ながら大きく円高に動いた背景には、為替市場において徐々に円売りポジションへの傾斜が目立ってきた反動もあったのではないでしょうか。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、17日時点で売り越し(米ドル買い越し)が6万枚まで拡大しました。これは、2025年のトランプ政権発足後の最高を更新するものでした(図表2参照)。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表2]米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2025年1月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

それでも2022、2024年介入局面の円「売られすぎ」にはあらず

ただし、これまでの実績からすると6万枚程度は、まだ円の「売られすぎ」を懸念するほどではないでしょう。たとえば、日本の通貨当局が「行き過ぎた円安」として米ドル売り・円買い介入を行った2022、2024年などは、円の売り越しが10万枚を大きく上回り拡大していました(図表3参照)。「行き過ぎた円売り」という状況にあったから為替介入が円安の反転に成功した面があったと考えられます。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表3]米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

上述のように19日、片山財務相は米ドル売り・円買い介入の可能性を示唆したとも受け止められる表現で強く円安をけん制しました。ただ少なくともこの投機筋のポジション・データを参考にする限りでは、足下は2024年まで為替介入が円安を反転させることに成功した状況とは異なっているように感じられます。

 

米金利、利上げ織り込みに転換=米国株の下落が拡大

米ドル高・円安が続く背景には、イラン情勢を受けた原油などの供給懸念が円売り材料になっていることとともに、日米金利差(米ドル優位・円劣位)拡大の影響がありそうです(図表4参照)。そして、それを主導しているのは米金利の上昇です。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表4]米ドル/円と日米2年債利回り差(2026年1月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

金融政策を反映する米2年債利回りは、先週はいよいよ政策金利であるFFレート誘導目標上限の3.75%を上回って上昇するところとなりました(図表5参照)。これは追加利下げ見通しが消滅したにとどまらず、金利市場が先行きのFFレート引き上げを織り込み始めたという意味になります。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表5]FFレートと米2年債利回り(2017年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

ただこのように米利下げ見通しが消滅し、利上げの可能性まで取り沙汰されるように変わるなかで米国株は先週大きく下落しました。その意味では、米金利上昇が米ドルにとってポジティブに評価される状況が続くかは微妙になってくるかもしれません。

今週の注目点=米景気へ悪影響の懸念が目立ってきたイラン情勢

「有事の米ドル買い」の見方も変化か=イラン情勢、米経済へ悪影響

イラン情勢は、ホルムズ海峡封鎖により原油やガスなどのエネルギー供給懸念が浮上したことにおいては、「世界一の産油国」である米国には相対的に悪材料ではなかったでしょう。ただ原油価格などの上昇が長期化するなかで、これまで見てきたように追加利下げ見通しから利上げ見通しに転換するなど米景気を減速させる可能性も出てきたようです。そういったことがさらなる株価の下落をもたらすようなら、米ドル買いの流れが変わる可能性もあるのではないでしょうか。

 

先週、160円突破寸前で一時的に米ドル安・円高へ大きく反転したのは、そんなふうにイラン情勢が「有事の米ドル買い」といった具合に一方的に米ドル買い要因とみなして良いのか見方が分かれてきた影響もあったのではないでしょうか。

 

原油価格自体は、さすがに急激な上昇により、先週は「上げ渋る」感じも出てきました(図表6参照)。この背景には、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)の90日MA(移動平均線)かい離率がプラス50%以上に拡大するなど、記録的な「上がり過ぎ」の可能性もありそうです(図表7参照)。そういった意味では、このままさらに原油価格が一段と上昇するということではなく、むしろ何かの拍子に「上がり過ぎ」の反動で急落することもあるのではないでしょうか。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表6]米ドル/円とWTI(2026年1月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表7]WTIの90日MAかい離率(2000年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

両サイドに振れやすい不安定な状況=今週の米ドル/円は157~162円で予想

記録的な原油価格の「上がり過ぎ」が米経済への悪影響となることで米ドル買いの流れが変わるか、または米経済への悪影響回避の観点がイラン戦争終了へのきっかけになるようなら原油価格が「上がり過ぎ」の反動から大きく下落に転換する可能性もあり、その場合でも米ドル売りをもたらすのではないでしょうか。

 

以上のように見ると、今週も引き続きイラン情勢をにらみながら米ドル高、米ドル安の両サイドに振れやすい不安定な状況が続く可能性が高そうです。今週の米ドル/円は157~162円のレンジで予想します。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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