本連載は、株式会社リーシングジャパン代表取締役、沖野元氏、不動産コンサルタント、林浩一氏の共著『賃貸の新しい夜明け』(週刊住宅新聞社)の中から一部を抜粋し、定期借家契約のメリットと定期借家契約を実際に活用する際のポイントを紹介します。

「更新」がないため、家賃の改定が容易に

本連載では、大家さんにとっての定期借家契約のさまざまなメリットをまとめて解説していきます。

 

①不良入居者を期間満了で退去させられる

定期借家契約は、設定した期間の満了によりいったん賃貸借契約が終了するという契約です。ですから、他の入居者に迷惑をかけるような不良入居者を、どんなに長くても期間満了で退去させることができるのです。

 

 

ただし、期間満了でも退去せず居座られた場合は、明け渡し訴訟等の法的措置をとる必要があります。ただその場合でも、立ち退き料や正当事由なしで、普通借家契約よりはスムーズに退去させることができます。このように定期借家契約では不良入居者を退去させ、トラブルの長期化を防ぐことができます。

 

②家賃の改定がしやすい

定期借家契約に「更新」はありません。再契約になる場合でも期間満了により、契約はそこでいったん終わります。したがって、その都度の家賃設定がしやすいのです。再契約というのは「新たな契約」となるからです。その分家賃の値上げも容易です。

 

ただし、周辺相場より大幅に値上げすることは、ただ入居者の反発を買うだけとなるでしょう。もちろん周辺の家賃相場が下がっている時に、入居者を引き止めるために値下げをすることも容易です。また、定期借家契約では賃料増減額請求権の排除が認められています。つまり、「契約期間中は賃料改定をしない」という特約を盛り込めば、契約期間中は借主からの賃料減額請求を拒否できるのです。

退去には「立ち退き料」も「正当事由」も不必要

③万一の時、立ち退き料がいらない

万一の時というのは、①で示したように不良入居者が入居した場合で、立ち退きが必要になった時のことです。定期借家契約を結んでいれば、法的に立ち退き料は必要ないことになっているのです。立ち退き料というのは高額になりがちですので、これがいらないというのは大きなメリットです。大家は借主と対等な立場ということになるので、精神的にも楽です。また、立ち退き料に加えて正当事由も必要ないことになっています。

 

正当事由とは、この文言のとおり立ち退きを迫るための正当な理由とでも考えてください。実はこの正当事由というのがくせ者で、裁判でもほとんど認められることがないのです。したがって、正当事由を補完する意味で立ち退き料が必要ということになります。そのやっかいな正当事由が必要ないというのも大きなメリットです。

 

④自宅を貸しやすい

 

これは想像すればわかりますね。定期借家契約では賃貸借期間を自由に設定できるため、自宅を一定期間だけ貸すということがしやすいのです。これから多様な住まい方が広がっていく社会になるので、こういう場合にも活用できると覚えておくと良いでしょう。

本連載は、2015年8月刊行の書籍『賃貸の新しい夜明け』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

賃貸の新しい夜明け

賃貸の新しい夜明け

沖野 元,林 浩一

週刊住宅新聞社

長らく旧態依然としていたこの不動産業界にも、大きな波が来ています。人々のライフスタイルの変化による波が、住まい方の変化にも及んできています。 こうした時代の変化に、不動産業者も大家さんもついていくしかありません…

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