今回は、定期借家契約で大家と入居者の関係が「対等」になる理由などを見ていきます。※本連載は、株式会社リーシングジャパン代表取締役、沖野元氏、不動産コンサルタント、林浩一氏の共著『賃貸の新しい夜明け』(週刊住宅新聞社)の中から一部を抜粋し、定期借家契約のメリットと定期借家契約を実際に活用する際のポイントを紹介します。

入居者の信頼性に合わせて契約期間を延ばせる

前回の続きです。

 

⑤契約期間の設定が容易

定期借家契約では、1週間〜20年などというように契約期間をフレキシブルに設定できるというメリットがあります。短期間でも長期間でも使えるということになります。シェアハウスやゲストハウスの場合はもちろん短期間で、たとえば1年未満の定期借家契約にする場合が多いです。

 

あるシェアハウスでは、初めての入居の場合は3ヶ月間、次の再契約は6ヶ月間、続いて10ヶ月間というように、入居者の信頼性に合わせて徐々に契約期間を延ばすというやり方をとっています。これはまさに定期借家契約だからこそ、できることでしょう。また、通常の賃貸物件の場合でも、入居希望者の属性が良くない場合などに定期借家契約で期間を短めにするやり方はありだと思います。

 

 

逆に長期間の設定は、後述する「借主負担DIY型」で借主がリフォーム費用を負担する場合などに使えるでしょう。

 

⑥借主の不当な要求を抑止できる

繰り返しますが、大家と借主が対等になれる契約方法は定期借家契約だけです。普通借家契約では、借主が不当な要求をしてきたときに泣く泣く飲まざるを得ないことがあります。

 

たとえば、普通借家契約では契約更新時に借主が家賃の減額を要求してくることもあるでしょう。ここで合意できないとなると、法定更新となる可能性が出てきます。法定更新のデメリットについては先述したとおりです。この点、定期借家契約であれば再契約しなければよいだけのことになります。その部分は借主にも一定のプレッシャーを与えることになり、不当な要求の抑止につながります。

定期借家契約は「不良入居者対策」に有効

⑦建替えがしやすい

定期借家契約は、普通借家契約と違って契約期間を確定できるため、先の計画が立てやすいのです。とくに築数十年といった築古物件は、大規模なリニューアルや建替えを控えていますので、定期借家契約を利用しないと計画が立てられないだけでなく、いざという時に高額な立ち退き料を必要とする可能性が高くなります。おそらく大家さんにとって、これほどのリスクはないでしょう。以上のような理由から、築古物件の大家さんにとって定期借家契約は必須であると考えてください。

 

 

前回と今回で見てきたようにメリットの①、③、⑥は不良入居者対策といってもよいものです。最近、管理業者の多くが何らかのトラブル時に自己主張が激しい借主が増えてきたと感じています。そんな場合でも、定期借家契約にしていれば不良入居者対策としていかに機能するかがご理解いただけたのではないでしょうか。

 

そうするとこういうことを言われる方がいます。「そもそも不良入居者なんか入れなければいい」と。もちろんそのとおりです。私の会社でも管理物件を預かっていますので、入居面談を必ず行うようにしています。そこである程度は防ぐことができますが、やはり漏れは出てきます。そうした場合のリスクヘッジとして滞納保証会社の利用と共に定期借家契約を利用することにしていて、それらが不良入居者対策として優れたものであることを確認しているのです。

 

 

ただし、滞納保証会社の利用には注意する点があり、まだ業界ができて浅いため不安定な会社や倒産する会社もあります。実際は、仲介した不動産業者の提携している保証会社を利用せざるを得ないのですが、それでも利用する会社の信用力を十分に確認する必要があるということは覚えておいてください。

 

本連載は、2015年8月刊行の書籍『賃貸の新しい夜明け』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

賃貸の新しい夜明け

賃貸の新しい夜明け

沖野 元,林 浩一

週刊住宅新聞社

長らく旧態依然としていたこの不動産業界にも、大きな波が来ています。人々のライフスタイルの変化による波が、住まい方の変化にも及んできています。 こうした時代の変化に、不動産業者も大家さんもついていくしかありません…

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