築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
「1年間の猶予期間」を活かす…相続時精算課税制度による“評価額の早期固定”
2026年度の改正が現実味を帯びるなか、2027年の施行(予定)までの1年間が、富裕層にとって最後の重要な窓口となります。ここで注目すべきが、「相続時精算課税制度」の活用です。
相続時精算課税制度とは、原則60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫へ贈与を行う際、2,500万円までの贈与税を非課税(超えた分は一律20%)とし、その贈与財産を相続時の財産に加算して精算する制度です。
この制度のメリットは、相続時の評価額が、贈与時の価額に固定される点にあります。もし、改正ルールの施行前(2026年中など)に、現行の路線価評価で子どもに不動産を贈与し、相続時精算課税を選択しておけばどうなるでしょうか。将来相続が発生した際、その不動産は贈与時の低い評価額で計算されます。改正後の5年ルールは、あくまで相続財産としての不動産評価を縛るものですが、すでに贈与を終えている財産については、贈与時の評価ルールが適用されるため、実質的な「評価額の早期固定」が可能になる計算です。
ただし、これには不動産取得税や登録免許税などのコストも伴います。単なる節税額だけでなく、トータルの移転コストを精査するシミュレーションが必要になってきます。
「自社地への新築」は対象外?制度の穴と、これからの“健全な”相続対策のあり方
今回の改正案には「対価を伴う取引により取得又は新築をした」という文言があります。では、すでに所有している土地(自社地や先祖代々の土地)に、賃貸物件を新築する場合はどうなるのでしょうか。
外部から土地と建物を購入する、あるいは建売物件を取得する場合は5年ルールの対象ですが、所有地に建てるケースにおいて、土地の評価までが5年ルールに引きずられるのか、あるいは建物部分の建築費のみが対象となるのかは議論の余地があります。建物については取得(新築)から5年以内であれば時価(建築費ベース)評価となる可能性が高いものの、古くから持っている土地の評価まで時価に引き上げられることは、制度の趣旨から外れるとの見方もあります。
しかし、過度な制度の穴探しは禁物です。今回の改正案が示唆しているのは、出口(相続)直前のテクニックによる節税時代の終焉です。これからの健全な相続対策は、以下の3点に集約されるでしょう。
1.早期着手:5年ルールの圏外に出るため、10年、20年スパンでの資産承継を計画する。
2.収益性の重視:節税による評価減だけを目的とせず、増税分を補って余りあるキャッシュフローを生む物件を選別する。
3.生前贈与の加速:相続時精算課税や暦年贈与を組み合わせ、財産そのものを早期に次世代へ移転する。
「不動産を持てば相続税が下がる」という思考を捨て、税制の大きな転換点に備える必要があります。まずはご自身の所有物件が、取得から何年経過しているか、いま相続が起きた場合の評価額はどうなるのか、現状把握から始めてみてはいかがでしょうか。具体的な対策や個別事案への影響については、税理士等の専門家と連携しながら、万全の準備を進めていくことをお勧めします。
川口 誠
MK Real Estate 税理士事務所
税理士

