(※写真はイメージです/PIXTA)

アパート経営において管理すべき税金は、日々の家賃収入を申告する「不動産所得」に対する税金だけではありません。物件を売却して利益を確定させる「出口戦略」の段階では、不動産所得とは計算方法が異なる「譲渡所得」に対する税金への対策が不可欠となります。本記事ではこの「譲渡所得」に焦点を絞り、アパート売却タイミングの見極め方や所有期間による税率の違い、経費として認められる費用、売却損が出た場合の損益通算などを、元国税調査官で自らも不動産投資を行っている川口誠税理士が解説します。

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「譲渡所得税」の計算方法と税率の仕組み

アパートなどの不動産を売却して得た利益は「譲渡所得」とされ、給与所得などほかの所得とは分離して課税されます。この譲渡所得にかかる税金が、不動産の「譲渡所得税」です。

 

譲渡所得の計算式

譲渡所得は、下記の計算式で求められます。

 

譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)

 

出所:筆者作成
[図表1]譲渡所得を構成する3つの要素と計算上の留意点 出所:筆者作成

 

譲渡所得税の税率と所有期間

譲渡所得税の税率は、アパートを売却した年の1月1日時点における所有期間によって大きく異なります。これは税負担を軽減するうえで最も重要な要素の一つです。

 

出所:筆者作成
[図表2]譲渡所得税の税率と所有期間 出所:筆者作成

 

図表2のとおり、長期譲渡所得の税率は短期の約半分です。もし売却検討中のアパートの所有期間が5年にわずかに満たない場合は、売却を翌年1月1日以降に遅らせるだけで、税率が大幅に下がり、手取り額が大きく向上する可能性があります。

譲渡所得税を圧縮する「税務テクニック」

譲渡所得税を最小化するための基本的な戦略は、「適用税率を下げる(所有期間を調整する)」もしくは、「譲渡所得金額を減らす」かの2点です。

 

売却タイミングの厳選による税率の最適化

前述のとおり、所有期間が5年超となる翌年1月1日以降に売却を実行することが、長期譲渡所得の低い税率(20.315%)を適用するための条件です。税法上、契約日ではなく、引渡し日(決済日)が売却年を決定します。

 

②取得費・譲渡費用の漏れを防ぐ

譲渡所得の計算式からわかるように、収入金額から差し引く取得費と譲渡費用が多ければ多いほど、課税される譲渡所得は少なくなります。

 

まずは取得費を正確に把握します。売買契約書や領収書など、購入時の資料をすべて探し出しましょう。購入価格だけでなく、仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、造成費用、改良のためのリフォーム費用(資本的支出)など(※)も取得費に含めることができます。

 

※上記費用のうち、すでに不動産所得などの申告の際に必要経費に算入したものは、取得費には含めることができません。

 

資料を紛失して取得費が不明な場合には、譲渡価額の5%を概算取得費とすることができますが、これは実際の取得費よりも低くなることが多く、税額が増大する原因となります。資料の確認が最優先です。

 

そして、譲渡費用を漏れなく計上します。売却時の仲介手数料、印紙税、測量費、建物の解体費用(更地で売却する場合)、売却のために要した広告宣伝費、立退料、弁護士費用(譲渡代金の取立費用、訴訟費用などは除く)なども譲渡費用に含めます。

 

③「特定事業用資産の買換え特例」の活用

アパートなどの事業用不動産を売却し、一定の期間内に別の事業用不動産に買い換える場合、「特定事業用資産の買換え特例」が適用できる可能性があります。これは、譲渡益に対する課税を、買い換えた新しい資産に繰り延べる(先送りする)ことができる制度です。課税を完全に免れるわけではありませんが、当面の税負担を大幅に軽減し、手元資金を次の投資に回すことができます。

 

ただし、特例を受けるには、譲渡資産と買換資産が所在する地域や資産の種類など、細かな要件を満たす必要があります。都市部のアパートは対象外になりやすく、適用要件をしっかりと確認しましょう。

 

④譲渡損失が出た場合の損益通算

アパートなどの不動産を売却して損失(譲渡損失)が出た場合、この損失は、原則として給与所得や事業所得など、ほかの種類の所得と損益通算することはできません。しかし、同じ年内にほかの不動産の売却で譲渡益が出ている場合は、その譲渡益とアパートの譲渡損失を内部通算(相殺)することができます。

 

⑤法人所有のメリットと売却方法

アパートを法人(資産管理会社など)で所有していた場合、不動産の売却は法人が行います。法人では、売却益は法人のほかの利益と合算され、法人税が課されます。実効税率は、個人の長期譲渡所得税率(20.315%)よりも高くなる傾向にありますが、法人には繰越欠損金と相殺できるといったメリットがあります。

 

また、不動産そのものではなく「法人株式」を親族に譲渡するという手法もあります。この場合の課税対象は株式譲渡益となり、税率は一律20.315%です。法人保有の含み益に対して低い税率を適用できる、有力な出口戦略の一つです。一方で、時価より著しく低い価格で譲渡すると、差額が贈与とみなされる可能性があるため、価格算定には注意してください。

 

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本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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