多忙なマッキンゼー・パリでも、バカンスはしっかり
マッキンゼー・パリオフィスでは、もちろん平日は1日7時間で終わることはほぼ皆無ですが、バカンスはしっかり取ります。
実際、オフィスそのものが閉まります。夏は3週間(推奨は4週間)、冬は1週間(推奨は2週間)。その期間は強制的に有給休暇を取る仕組みになっており、誰もが長期休暇を取ることになります。
オフィスそのものが閉まる、つまり全員が同じ時期に長期休暇を取るので、バカンスの期間に仕事のメールが来ることもありません。その期間は、「完全なオフ」が可能なのです。
マッキンゼーで、誰よりも早くエンゲージメント・マネージャーに昇進した同僚がいました。誰よりも早く昇進した彼を見て、私はてっきり何もかもうまくいっているのだろうと思い込んでいました。
しかし、彼の口から出た言葉は、私の予想とはまったく異なるものでした。彼は仕事以外のすべてを犠牲にしてきたのです。恋人との関係は悪化し、プライベートの時間は土日以外ほぼなし。この先ここに居続けることはないと、もう心に決めていました。必ずしも仕事での成功が幸せをもたらすわけではありません。人それぞれ仕事の重みは違いますが、人生は仕事だけではないのだと感じた出来事でした。
年金改革によるデモで可視化された、仏国民と政府のギャップ
フランスの年金改革も衝撃を受けた一件でした。フランスの年金制度は長年にわたり財政的な持続可能性が問題になってきました。現行制度では、年金の受給開始年齢は62歳と、他の先進国と比べても比較的低い水準にあります。
こうした状況を受け、2023年にフランス政府は、年金の受給開始年齢を62歳から64歳へ引き上げることを柱とした大規模な年金改革法を成立させました。しかしこの決定は、国民の強い反発を招きました。全国各地で抗議行動が広がり、デモの参加者は100万人規模に。今でも覚えています。
地下鉄は運休し、街には回収されないゴミがあふれ、社会全体に国民の怒りと不満が噴き出していました。この混乱により政権の求心力は大きく低下し、政治は不安定化しました。そして2025年には、政府は年金改革の実施を一時停止せざるを得なくなります。
この一連の出来事は、「これ以上長く働きたくない」というフランス国民の主張と、政府の改革方針との間にある大きなギャップを象徴するものでした。
このように、フランスでは「仕事は人生の一部」であり、「人生のすべて」ではありません。仕事はあくまで生活のための手段であり、できるだけ効率的に終わらせ、自分の時間を大切にする、それがごく自然な考え方です。
星 歩
元マッキンゼーパリ・現OECD職員
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