月32万円の高級老人ホームへ入居後、母が要介護に。おむつ代や通院費など月4.5万円の新たな負担が発生したにもかかわらず、なぜか総支払額が減るという奇妙な現象が起きました。知っておくべき「老人ホームの費用のカラクリ」についてみていきます。
「月32万円」の高級老人ホームに入居した78歳母が要介護に。〈おむつ代〉と〈通院費〉で「月4.5万円」の負担増も、総支払額は減る「老人ホームの費用」の不思議 (※写真はイメージです/PIXTA)

理想の終の棲家で始まった、突然の介護

都内近郊に暮らす会社員の高橋達也さん(51歳・仮名)。3年前に父親を亡くしたことをきっかけに、一人暮らしとなった母親の和子さん(78歳・仮名)を「介護付き有料老人ホーム」へ入居させる選択をしました。

 

「母は当時、体に不調はなく元気でしたが、広い一軒家での一人暮らしは維持も大変だし、何かと不安でした」

 

高橋さんのケースのように、一人暮らしの不安や広い住まいの管理の負担から、早いうちに老人ホームなどの施設への住み替えを選択する高齢者は少なくありません。

 

内閣府『令和5年度高齢社会対策総合調査(高齢者の住宅と生活環境に関する調査)』によると、住み替えを検討している高齢者が希望する住居先として、特別養護老人ホームなどの「介護保険施設」を挙げる人は10.6%、高橋さんの母親が入居したような「有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅」を挙げる人は9.5%となっています。これらを合わせると、約2割の高齢者が施設への入居を希望しています。

 

さらに、単身世帯の高齢者は他の世帯に比べて住み替えの意向を持つ割合が高く、約4割に上ります。一人暮らしの不安が現実化する前に、見守りやケアのある環境へ移行することは、高齢期の住まい選びにおける重要な選択肢の一つとなっています。

 

親子が選んだのは、フロントサービスや充実した共用施設を備えた高級老人ホーム。入居一時金として約1,500万円を支払い、月額利用料は約32万円。和子さんの遺族年金とこれまでの蓄えを合わせれば、毎月の支払いは問題なく継続できる計算であり、これならば老後資金がショートすることはないはずだと確信していたといいます。

 

入居当初、和子さんは大きなトラブルもなく穏やかな生活を送っていました。しかし、入居から2年が経過した頃、生活に変化が訪れました。和子さんの認知症が進行し、車椅子での生活が増えて、本格的な介護が必要になったのです。

 

「介護が必要になれば、おむつ代や様々なサポート費用が上乗せされて、毎月の請求額が何万円も跳ね上がるだろうと覚悟しました」と達也さんは言います。