「ここなら穏やかに暮らしていける」移住を選択した72歳女性
「年金だけでも何とかなると思ったんです」
そう話すのは、関東から地方の小さな町へ移り住んだ和子さん(仮名・72歳)です。
夫を亡くしたあと、月12万円ほどの年金で一人暮らしを続けていました。もともとは賃貸マンションに住んでいましたが、家賃の負担が重く感じられるようになり、「もっと固定費の少ない暮らし」に切り替えたいと考えるようになったといいます。
そんなときに見つけたのが、地方にある築古の一戸建てでした。価格は手の届く水準で、庭もあり、静かな環境です。都市部より生活費も抑えられそうで、「ここなら老後を穏やかに過ごせる」と感じたといいます。
引っ越した当初は、満足していました。近くに畑があり、空気もきれいで、部屋も広い。家賃を払い続ける不安から解放されたことも大きかったようです。
ところが、移住から数ヵ月が過ぎた頃、和子さんは少しずつ想定外の支出に直面するようになります。
まず重かったのが、車の維持費でした。最寄りのスーパーまでは車で15分ほど。病院や銀行も徒歩圏にはなく、暮らしを回すには車がほぼ必須でした。ガソリン代だけでなく、任意保険や車検、消耗品の交換など、都市部で暮らしていたときにはあまり意識しなかった費用が積み上がっていきます。
それに加えて、自治会費や草刈りの負担、冬場の光熱費も予想より重くのしかかりました。
「家賃がなくなれば楽になると思っていたのに、別の出費が次々出てきたんです」
さらに困ったのは、古い家ならではの維持費でした。
国土交通省の移住・住みかえ相談資料でも、移住後に想定外の費用が発生するケースが紹介されています。たとえば、上水の引き込み費用や区費(町会費)、浄化槽の設置や補修費などが、都市部で暮らしていたときには意識していなかった負担になる場合があるとされています。
また同省の資料では、高齢期の住み替えを考える背景として、住宅の老朽化や住みにくさ、交通や買い物の不便といった生活環境の問題も指摘されています。
