「役職定年」の無視できない影響力
役職定年とは、課長・部長といった役職に定年を設け、一定の年齢に達した時点で外れる制度です。
近年は役職定年制度を設けない企業も増えていますが、銀行や証券会社などの大企業では依然として制度が残っているケースが少なくありません。多くの企業では55歳前後が基準とされますが、銀行などでは52歳前後に設定されている場合もあります。
もっとも、制度がない企業であっても安心とは言い切れません。中小企業では制度そのものが存在しなくても、60歳前後で処遇が引き下げられることがあり、結果として役職定年と同様の影響がある場合があります。制度の有無だけで将来の安定性を判断することはできません。
役職定年をきっかけに給料が半分になるケースも
役職定年で家計に最も大きな影響を及ぼすのは、役職手当がなくなることです。課長・部長・執行役員といったポストに紐づく手当が外れることで収入が大きく下がり、年収がほぼ半減するケースもあります。
さらに深刻なのは、この収入減が一時的ではなく、その後も戻りにくいことです。したがって、下がった収入を前提に、その後の長期的な生活設計を組み直さなければなりません。
役職定年が“痛い”理由
55歳は家計支出のピークを迎えやすい
役職定年による負担が大きく感じられる背景には、55歳前後が家計支出のピークになりやすいことも影響しています。子どもの大学進学や仕送り、住宅ローンの返済が同時期に重なる家庭は少なくありません。
大学の授業料は、たとえ国公立大学であっても、年間50万円弱かかります。子どもが2人とも大学生であれば年間約100万円、月に換算すると8万〜10万円程度の負担になります。さらに、地方から都市部へ進学して1人暮らしをする場合、家賃や生活費を含めた仕送りは月10万円程度が一般的です。2人分となれば月20万円となり、家計への負担はばかになりません。
また、仮に6,000万〜7,000万円の住宅ローンを30〜35年で組んでいる場合、返済額は月に15万〜18万円程度です。
学費と仕送りで30万円強、そこに住宅ローンが加わると、月50万円規模の支出になります。ここに食費・光熱費・自動車維持費などが重なるため、実際の家計負担はさらに重くなります。
こうした点から、55歳前後は人生のなかで支出が最も膨らみやすい時期といえます。この時期は、キャッシュフローが一時的に赤字になる可能性もあるため、家計を「見える化」し、資産運用や退職金の活用も含めて再設計することが重要です。早い段階で準備を始めることで、選択肢は広がります。
