「感覚会計」を行っていないか?
そもそもどうして付け焼き刃の決算対策をしなくてはならないかというと、行き当たりばったりの会計やどんぶり勘定の会計、あるいは、自分の中の感覚に頼った〝感覚会計〟をしているからです。
私もクライアントに注意することがあるのですが、人を雇い入れるとき、その場で給与額を約束してしまう社長がいます。「腕の良いやつなんだ。だから、手取り30万円はやるって約束してきた」と事後報告で聞かされて、ビックリします。
手取り金額は、会社が支払う額面から税金や社会保険料を引いたもので、一般的なサラリーマンでは額面のおよそ75~80%になります。ですから、手取りで30万円というと、会社は約40万円を払うことになってしまうのです。これだけでも社長の中の金銭感覚と、実際に動くお金との間で10万円のギャップが出ることになります。
「もし給与のお話をされるのであれば、くれぐれも手取り額ではなく額面で提示してくださいね」と、強くお願いしました。
社長自身が経理と連動して適切な決算書を作る
見積りを出すときもそうです。本来なら「この仕事にかかる経費はいくらだから、利益を出すためにはこれくらい」と想定して請求額を決めます。その際に、社内従業員の給与や文房具代、事務所家賃や駐車場代、その他細々とした経費をすべて頭において見積もらなければなりません。
しかし、社長が経理と連携せず、自分の感覚に頼ったアバウトな会計をしている場合は、つい外注費や細かい材料の仕入れなど原価そのものの把握に漏れが生じてしまい、最終的に予定していた利益が出なくて、採算が合わなくなってしまうことが起こります。
あるいは、売掛金の回収が遅れていることに気づかないまま時間が経ってしまい、後からではなかなか回収ができなくなってしまうケースもよくあります。売掛金はさっきの買掛金の逆で、ツケで物を売ることです。商品だけ先に渡して、お金の回収が後からになるので、回収し損ねると商品だけが出ていって損失になります。
こういうアバウトな経営が当たり前に行われている会社では、必然的に決算書に矛盾が生じたり、決算が出る直前になってから「こんなはずじゃなかった。もっと利益が出るはずだったのに」ということになります。それで、慌てて決算書の数字を操作して、辻褄を合わせたり、強引に見栄えを整えたりすることになってしまうのです。
後ろ暗い決算書ではなく、正々堂々とした決算書を作るためには、自社の経理に「会計の自計化」と「10カ月決算」を取り入れることをお勧めします。