前回は、大きな損失につながる社長の感覚に頼った「アバウト」な会計の問題点を説明しました。今回は、会社の会計を税理士任せにせず、「自計化」するメリットを見ていきます。

自社の設備投資はタイミングが大事

ビジネスはリスクを伴う賭けでもあります。たとえば、設備投資すれば生産性が向上して売上アップにつながると思って機械を入れたけれども、当てが外れて借金だけが残ってしまう場合もあります。だからといって設備投資をしないと次の展開はなく、先には進んでいけません。

 

設備投資することが良い・悪いではなく、どのタイミングでしていくかが大事です。また、設備投資をすることでどんなリスクがあるか、リスクに対してどう対処していけるかを考えておくことが大事です。そのためには、社長が自社の財務状況を把握しておかなければなりません。もし当てが外れたときのリスクに耐えうるかどうか、それをきちんと数字という客観的な指標で見極める必要があるのです。

 

こうした経営判断をする際に判断材料になるのが、経理から上がってくる報告、つまり会計書類です。これを税理士任せにするのではなく、社内で自計化しましょう。

自計化で「業績をリアルタイムで把握できる」

自計化することのメリットには、こんなものがあります。

 

●コンピューターが処理してくれるので、伝票の手書きをしなくてよくなり、時短になります

 

●スピーディーに表計算や分析ができるため、リアルタイムで経営状態や業績を把握することができます

 

●経理の処理が簡単なので、日々行っても負担になりにくいです。日々チェックをすることになるので、ミスを軽減することができます。また、不明な取引や入出金の内容を、見失うことなく思い出すことができます

 

●リアルタイムで業績を把握できるので、経営方針の変更をしたり、対策を講じたりの判断がしやすくなります。先々の業績の見通しも立てやすくなります

 

●最新のお金の出入りがわかるので、資金繰りの状況や返済の状況などを把握しやすくなります

 

●税理士に記帳業務を代行してもらわなくていいので、本来の顧問業務にお金を回すことができ、付加価値の高いサービスを受けることができます

 

●正確な決算書が作れるので、金融機関に対して融資を申し込む際などに、自社の信用度を増すことができます

 

これらのメリットの中でも最大は「業績をリアルタイムで把握できる」点でしょう。今後の業績の見通しを立てやすくなるので、先手を打った戦略的な対策ができたり、安定的な経営が行えたり、経営方針の転換や業績回復に向けた是正策を講じたりすることができます。

 

ただし、会計を自計化したら、社長はそれで満足してしまわないで、月に一度は社内にいて、会計書類のチェックをしてください。せっかく自計化しても、それが経営に生かされなければもったいないからです。

 

また、社長は自身の経費精算も怠らずに!領収書をいっぱい溜め込んで、あとでまとめて処理しようとすると、たいてい「あれ?何に使ったお金だったか」となってしまいます。すると、会計処理が進まないどころか、数字に矛盾が出てきてしまうことになります。いくら優秀なソフトや経理担当が揃っていても、肝心の材料が足りないと力を発揮できません。

本連載は、2016年11月10日刊行の書籍『銀行に好かれる会社、嫌われる会社』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

銀行に好かれる会社、嫌われる会社

銀行に好かれる会社、嫌われる会社

鈴木 みさ

幻冬舎メディアコンサルティング

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