前回は、「損益計算書」を構成する5つの利益について説明しました。今回は、「税理士への顧問料」をどのように考えるべきか、エピソードを交えて見ていきます。

「より能力のある」税理士が必要な理由

日本人はどうも知識に対してお金を払うことを「もったいない」と感じる傾向があるようです。税理士も弁護士も私のようなコンサルタントも、自分の知識と情熱とハートでお客様と向き合います。その評価が顧問料です。正当な評価を受けたと感じるとき、私たちはモチベーションが上がり、「もっとこの社長のために頑張ろう」と思います。

 

私が尊敬する社長の一人に教えられたことがあります。

 

その社長の会社は、一時的に資金繰りが苦しくなっており、今が踏ん張りどころという状況でした。縁あって私がコンサルティングをさせていただくことになり、最初にやったのは、顧問税理士を代えることです。それまでの先生は何のアドバイスもなく、また、会社の転機でもあり、より能力のある税理士が必要だと判断したからです。

 

私は新しく顧問になる先生に「この会社は今、踏ん張りどころなので顧問料を十分にお支払いすることができません。月々の経理処理はこちらで致しますので、申し訳ありませんが、1年間だけ顧問料2万円でお願いできないでしょうか」とお願いしました。2年目からは余裕が出るはずなので、それに伴って顧問料もアップする予定でした。先生は快諾してくださいました。

「お金」を生かすも殺すも社長次第

ところが、社長に先生を紹介し、顧問料のことを伝えると、「そんなの嫌だよ!」と言うのです。

 

それは、「たった2万円でも払うのが惜しい」という意味ではありませんでした。まったくその逆です。

 

社長は「自分だったら、そんな金額なら仕事は受けない。きちんとした仕事をしてもらうのだから、それなりの顧問料を支払いたい。ただ、どうしても今、動かせるお金が3万円しかない。1万円しかプラスできなくて申し訳ないが、何とかこれでスタートさせてはくれまいか」と言ったのです。

 

この言葉を聞いて、先生も私も、いたく感動しました。「少しでも先生の知識にお金を払いたい」という社長の想いが伝わってきたからです。

 

わずか1万円のことかもしれませんが、その1万円にどれだけの価値と力があることか。お金に意味を持たせるということを、私はこの社長に見せていただきました。

 

あれから何年も経ちましたが、社長の会社は今でも同じ先生が顧問をしています。会社も元気を取り戻し、新しい工場もできました。

 

知識をお金で買うこと、金額以上の利益を得ること、「お金」を生かすも殺すも社長次第なのです。会社の健全化のために、ぜひ能力のあるビジネスパートナーを見つけてほしいと思います。

本連載は、2016年11月10日刊行の書籍『銀行に好かれる会社、嫌われる会社』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

銀行に好かれる会社、嫌われる会社

銀行に好かれる会社、嫌われる会社

鈴木 みさ

幻冬舎メディアコンサルティング

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