金はまだ「買われすぎ(割高)」ではない?ETF資金と中央銀行の買いが支える6,000ドルシナリオ【2月の金市場】
(※画像はイメージです/PIXTA)
1月下旬の急落で市場に緊張が走ったものの、金相場は大きな混乱なく持ち直した。米国上場ETFへの資金流入、中国の旺盛な現物需要、そして中央銀行による構造的な買いが続くなか、金は依然として「過少保有」の資産にとどまるとの見方も強い。投機的な過熱が一巡したいま、6~12カ月で1オンス6,000ドルを視野に入れる強気シナリオは現実味を帯びている。ビットコインETFとの資金フローの乖離や、中国市場のプレミアム拡大といった足元の動向を踏まえつつ、金市場の現在地を整理する。なお、本稿はステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの3名のストラテジストによる共同執筆です。
冷静に基本路線を継続
1月下旬から2月初旬にかけて貴金属市場全体で見られたボラティリティの高まりは、いつ起こってもおかしくない状況でした。活発なオプション取引(ディーラーによるガンマ・スクイーズや短期満期の集中など)、テクニカル指標の過熱(RSIなど)、月末のリバランス効果、そして価格を放物線状に押し上げた投機的な動きが、調整局面をもたらす要因となりました※1。
注目すべきは、米国および海外の金投資家が今回の下落を大きな混乱なく吸収し、1オンス4,500~4,700ドルの水準で「押し目買い」への意欲を再び示しているように見える点です。当社は引き続き強気のスタンスを維持しており、今後6~12カ月では1オンス6,000ドルに到達する可能性の方が、4,000ドルを割る可能性よりもはるかに高いと考えています。
1月下旬のある時点では、金は月初来で約30%、銀は約60%上昇していました※2。控えめに言っても、このような価格モメンタムは持続可能ではないでしょう。しかし、資産が「買われ過ぎ」ているからといって、「保有が過剰」であることを意味するわけではありません(今月のチャート参照)。加えて、現物市場は引き続きタイトな状態にあり、当社が2026年市場見通しで指摘した主要なマクロテーマも依然として有効とみられます。貴金属セクター、とりわけ金は、上半期に再び上昇する可能性の方が高いとみられます。
1月下旬の急落についても、全体の流れの中で見ることが重要です。確かに現物金価格は1月30日に約9%下落し、これは1日の下落率としては2013年以降で最悪となりました※3。それでも1月全体で金の騰落率は13.3%の上昇と堅調で、2025年のどの月よりも高い伸びを記録しました(1975年以降の月次データ基準で約2.3シグマの変動に達しました)※4。
実際、米国上場の金ETFは1月30日に資金流入を記録し、金価格も2月3日~4日には早々に1オンス5,000ドルを再び試す展開となり、その後は概ね4,500~5,000ドルの水準で安定しつつあるようです※5。
また注目すべきは、銀が貴金属市場のメルトアップを主導した一方で、1月30日の下落局面でも主導的な役割を果たし、日中に35~40%急落して弱気相場入りした点です※6。銀価格は年初来および前年比では依然として上昇していますが、銀は金の代替にはならない点に留意する必要があります。
当社は基本シナリオの金価格の見通しを、1オンス4,750~5,500ドル(ウェイト50%)に引き上げます。強気シナリオとしては5,500~6,250ドル(ウェイト35%)と上振れ余地を大きく想定し、弱気シナリオは4,000~4,750ドル(ウェイト15%)とします。
この水準は、従来の目標価格から10~20%の引き上げとなり、投資需要の規模や中国の個人需要、政策の不確実性による追い風が当初の想定よりも強かったことが背景にあります。また、想定レンジの幅も従来の500ドルから750ドルへ拡大しました。これは、現物価格の水準が一段切りあがったことに加え、ボラティリティが高水準を記録しているためです。
さらに、長期物のアット・ザ・マネー(ATM)インプライド・ボラティリティが上昇していることも、あくまで特定時点におけるリスク中立的な金オプション価格の反映ではありますが、基本シナリオの価格レンジを広げる必要性を示しています。
ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、約半世紀にわたり、機関投資家、金融プロフェッショナル、そして個人投資家に、より良い成果をもたらしてきた。
インデックス運用やETF(上場投資信託)分野における早期からの取り組みを含め、同社の投資手法は、市場に裏付けられた運用ノウハウと、投資家ニーズへの継続的な対応を基盤としている。
2025年6月末時点において、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが関与する運用資産残高は5兆米ドルを超えており、60カ国以上の顧客に対してサービスを展開している。その中には、グローバル規模での戦略的パートナーシップを通じた提供も含まれ、コスト効率に優れた幅広い投資手段を提供している。ETFの運用資産総額1兆6,898.3億米ドルを含み、そのうち約1,160.5億米ドルは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ・ファンズ・ディストリビューターズ・エルエルシー(「SSGA FD」)がマーケティング・エージェントを行っているSPDRの金の資産となっている。SSGA FDはSSGAの関連会社で、すべての運用資産残高は監査前の数値。
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本稿に示されている見解は2026年1月6日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。
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〈注記〉
※1 Source: Bloomberg Financial L.P., SSIM, as of 01/31/2026
※2 Source: Bloomberg Financial L.P., SSIM, as of 01/31/2026
※3 Source: Bloomberg Financial L.P., SSIM, as of 01/31/2026
※4 Source: Bloomberg Financial L.P., SSIM, as of 01/31/2026
※5 Source: Bloomberg Financial L.P., SSIM, as of 02/04/2026
※6 Source: Bloomberg Financial L.P., SSIM, as of 01/31/2026
※7 Source: Morningstar, LBMA, World Gold Council, State Street Investment Management, as of 12/31/2025
※8 Source: Morningstar, LBMA, World Gold Council, State Street Investment Management, as of 12/31/2025
※9 Source: Morningstar, LBMA, World Gold Council, State Street Investment Management, as of 12/31/2025
※10 Source: SSIM, World Gold Council, as of 12/31/2025
※11 Source: SSIM, World Gold Council, as of 12/31/2025
※12 Source: China Custom, LBMA, Shanghai Gold Exchange, as of 12/31/2025
※13 Source: Bloomberg Financial L.P., SSIM, as of 12/31/2025
※14 Source: World Gold Council, SSIM, as of 12/31/2025
※15 Source: China Custom, LBMA, Shanghai Gold Exchange, as of 02/05/2026
※16 Source: Bloomberg Financial L.P., SSIM, as of 01/31/2026
※17 Source: Bloomberg Financial L.P., SSIM, as of 01/31/2026
※18 Source: Bloomberg Financial L.P., SSIM, as of 02/05/2026
※19 Source: Bloomberg Financial L.P., SSIM, as of 02/05/2026
※20 Source: Bloomberg Financial L.P., SSIM, as of 02/05/2026
※21 Source: World Gold Council Gold Demand Trends: Q4 and Full Year 2025, as of 01/29/2026
※22 Source: World Gold Council Gold Demand Trends: Q4 and Full Year 2025, as of 01/29/2026
※23 Source: World Gold Council Gold Demand Trends: Q4 and Full Year 2025, as of 01/29/2026
※24 Source: World Gold Council Gold Demand Trends: Q4 and Full Year 2025, as of 01/29/2026
※25 Source: World Gold Council Gold Demand Trends: Q4 and Full Year 2025, as of 01/29/2026
※26 Source: World Gold Council Gold Demand Trends: Q4 and Full Year 2025, as of 01/29/2026
※27 Source: World Gold Council Gold Demand Trends: Q4 and Full Year 2025, as of 01/29/2026
※28 Source: World Gold Council Gold Demand Trends: Q4 and Full Year 2025, as of 01/29/2026
※29 Source: World Gold Council Gold Demand Trends: Q4 and Full Year 2025, as of 01/29/2026
※30 Source: SSIM, as of 02/05/2026
※31 Source: SSIM, as of 02/05/2026
★1 出所:モーニングスター、ロンドン貴金属市場協会、ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データは2025年12月31日時点
★2 出所:中国税関、ロンドン貴金属市場協会、上海金取引所、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データは2026年2月5日時点
★3 出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データは2026年2月5日時点
★4 出所:ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データは2025年12月31日時点
〈用語集〉
中央銀行
一つの国または国家連合で用いられる通貨と信用の創造と分配を独立性を持って管理する金融機関。
COMEX
コモディティ(主に金、銀、銅、アルミニウム)の先物を取引する市場。
金のスポット価格
スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。
実質金利
インフレ調整後の金利。物価上昇の影響を取り除くことで、真の借入れコストおよび投資による実際の利回りを反映します。
ディーラー・ガンマ・スクイーズ
オプション市場におけるディーラーのヘッジ行動によって生じる市場の動き。投資家が大量のコールオプションを購入すると、ディーラーはガンマがショートの状態となります。その結果、価格が上昇するにつれてエクスポージャーをヘッジするために原資産を買い増す必要が生じます。これが需給をさらに逼迫(ひっぱく)させ、ファンダメンタルズとは無関係に価格上昇を加速させることがあります。
短期満期
数日から数週間で満期を迎えるオプション契約。満期が近づくにつれてガンマが高まり、小幅な価格変動でもディーラーのヘッジ取引が大きくなりやすく、原資産の短期的なボラティリティが増幅されることがあります。
RSI (Relative Strength Index:相対力指数)
直近の価格変動の速さと大きさを、0から100の尺度で測定するモメンタム指標。一般に70 を超えると買われ過ぎ(過熱)とされ、30を下回ると売られ過ぎと判断されます。
CIO (Chief Investment Officer:最高投資責任者)
資産運用会社、年金基金や大学基金、保険会社などにおいて、戦略的な資産配分を決定する上級投資責任者。CIOのポジション変更は、短期的な売買判断というよりも、長期的なポートフォリオ構築方針の見直しを反映していると考えられます。
レフトテール・ヘッジ
株式急落、政策ショック、通貨の不安定化など、極端に悪い市場結果(下振れ)からポートフォリオを守るためのポジション。金は、市場全体におよぶストレス局面における過去のパフォーマンスから、レフトテール・ヘッジとして位置づけられることが多いです。
中国人民銀行(PBOC)
中国の中央銀行であり、金準備を継続的に積み増している主要な構造的買い手。
中国金価格プレミアム
上海黄金取引所(Shanghai Gold Exchange:SGE)の金価格と国際指標価格との価格差。プレミアムがプラスの場合、中国国内における現物需要の強さや供給の逼迫(ひっぱく)を示し、しばしば金の輸入増加を促す要因となります。