もうマンションは売りたい…父の死後、賃貸マンションを相続した〈60代・専業主婦の母〉に30代・公務員の長女が「待った」。さらに〈1億4,000万円投資〉を決断したワケ【相続の専門家が解説】

もうマンションは売りたい…父の死後、賃貸マンションを相続した〈60代・専業主婦の母〉に30代・公務員の長女が「待った」。さらに〈1億4,000万円投資〉を決断したワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「もうマンションは売ってしまいたいの」。3年前に父を亡くし、自宅や14世帯の賃貸マンション、駐車場を相続した母親(60代)は、管理の負担から売却を考えていました。しかし本当に手放してよいのか? 育児休暇中だった寺田るいさん(仮名・30代)は、母の資産状況を初めて精査することに。売却か、活用か。相続税と将来の収支を見据えた選択とは何か。相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が実例で解説します

4社のプラン分析と評価

4社はそれぞれ得意分野が違い、それぞれ特徴があるのでどこを選択しても悪くはないため、何を判断基準にするかにより、結論が違います。その中で1社を選択することは簡単ではなく、何度も各社とミーティングし、モデルルームの見学をしたりして、母親とるいさんの気持ちが固まりました。各社の分析をしてみました。

【プラン①:A社】

・分析:14戸という圧倒的な戸数で、年間収支・手残りともにNo.1。
 

・メリット:「とにかく早く借金を返したい」「手元の現金を増やしたい」という収益特化型。
 

・懸念点:建築費を抑えるため、将来の修繕費や遮音性において、RC造や鉄骨造に劣る可能性がある。

【プラン②:B社】※るいさんの決断プラン

・分析:木造の「コストの低さ」と、2×4工法の「安全性」を掛け合わせたバランス型。
 

・メリット:35年という長期ローンを組む上で、耐震・耐火性に優れた2×4は安心材料。建築費も1億4,000万円台と抑えられており、無理のない経営が可能。
 

・決め手:公務員のるいさんにとって、「過度なリスクは取らないが、十分な耐震性能は確保したい」という守りの姿勢に合致。

【プランC社】

・分析:鉄骨造によるブランド力と、助成金を活用した最新鋭の賃貸住宅。
 

・メリット:ゼロエミ助成金2,200万円を利用することで、実質的な建築費を圧縮。
 

・懸念点:建築費に対して戸数が11戸と少なく、手残り額が木造プランの約半分まで下がる。

 

【プラン④:D社】

・分析:資産価値を最大化する「100年建築」の思考。
 

・メリット:RC造(鉄筋コンクリート)のため、相続税評価額の大幅な圧縮が可能。また、不動産取得税10割減免など税制メリットが最大。
 

・懸念点:建築費が2億円を超え、返済負担が重い。お母様が一番恐れていた「多額の借金」が心理的ハードルに。

 

結論:なぜB社プランが家族にとっての正解だったのか

今回のケースで最も重要なのは、「事業主であるお母様の心理的ハードル」と「窓口である長女るいさんの実利的な判断」の着地点です。

1.相続税対策の完了

駐車場(更地)のままでは全額課税対象でしたが、アパートを建てることで「貸家建付地」の評価減を受け、建築借入金が負債として差し引かれます。これにより、プラン②の投資規模でも相続税を実質ゼロ、あるいは大幅減額にする目的は十分に達成できました。

2.管理のしやすさ

公務員のるいさんが育休明けに仕事復帰することを考えると、修繕トラブルの少ないしっかりした建物(2×4)であることは重要です。

3.「借金」への抵抗感の払拭

2億円の借入(プラン④)にはお母様が首を縦に振りませんでしたが、収支に余裕がある1億4,000万円(プラン②)であれば、「これなら自分たちでも返していける」と納得を得ることができました。

 

アドバイスにより、「最高値のプランが最高の対策ではない」ということが可視化された結果、納得のいく着地となった事例といえます。

「公務員の目」と「娘の想い」が選んだ結論

るいさんは、育休中の時間をフルに活用し、4社の提案書を読み込みました。お母様が一番心配していたのは「莫大な借金」です。

 

D社のRC造(2億円超)は、確かに立派ですが、今の家族の状況には重すぎる。

 

一方で、A社の最安プランは魅力的ですが、賃貸経営を長く続ける上での「建物の堅牢性」も捨てがたい。

 

そこでるいさんが下した決断は、「B社の木造ツーバイフォー(2×4)」でした。

 

なぜ「ツーバイフォー」だったのか? というと3つの理由からだと言えます。

 

1.投資コストの適正化: 建築費を1億4,000万円台に抑え、借入額をコントロールできます。

2.災害への強さ: 公務員として「守り」の意識も高い、るいさんにとって、耐震・耐火性に優れた2×4工法は、お母様を説得する大きな材料になります。

3.相続税対策の完了: このアパートを建てることで、更地だった駐車場は「貸家建付地」となり、さらに建築借入金が負債として計上されるため、懸案だった相続税の不安が解消されます。

 

動き出した未来:娘がプロデューサーになる日

当初は「もう何もしたくない」と後ろ向きだったお母様も、るいさんの熱意と、私たちが作成した「根拠のある比較表」を見て、少しずつ表情が変わっていきました。

 

「るいがそこまで調べて、面倒を見てくれるなら……」

 

今、このプロジェクトは着実に進行しています。

 

駐車場だった場所には、間もなく新しい入居者たちの生活が始まるアパートが建ちます。それはお母様にとっての「安定した老後資金」となり、るいさんにとっては「次世代へ引き継ぐ大切な資産」となります。

 

まとめ:土地活用は「誰と一緒に歩むか」で決まる

今回の事例から学べることは、「家族の中に、情熱を持って動く『窓口』がいれば、土地活用は必ず成功する」ということです。

 

しかし、るいさんのような賢明な判断をするためには、判断材料となる「公平なデータ」が不可欠です。もし、1社だけの営業マンの話を鵜呑みにしていたら、お母様の不安を拭い去ることはできなかったでしょう。

 

 

 

 

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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