特別縁故者が現れた場合、課税関係はさらに複雑になる
相続人がいない場合でも、特別縁故者が存在すれば、家庭裁判所の審判により、相続財産の全部または一部が分与されることがあります。
民法958条の2第1項では、特別縁故者として、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他、被相続人と特別の縁故があった者が挙げられています。
この特別縁故者が相続財産法人から土地などの財産を取得した場合、その取得は遺贈とみなされ、相続税の課税対象となります。しかし、ここに大きな税務上の問題が潜んでいます。
特別縁故者が取得した土地の取得価額は、被相続人の取得価額ではなく、「家庭裁判所の審判が確定した時点の時価」とされます。そのため、被相続人が長年保有し、値上がりした分、すなわちキャピタルゲイン部分が課税されないという結果になります。
これは、通常の相続や遺贈と比較しても、極めて不自然な税制上の取り扱いであり、課税の公平性という観点からも大きな問題を残しています。
キャピタルゲイン課税の「空白」をどう埋めるか
この問題を解消するためには、次の2つの方法が考えられます。
第一に、相続財産法人が特別縁故者に土地を引き渡す際、相続財産法人に対して譲渡所得課税を行う方法です。
第二に、相続財産法人が成立した時点で、所得税法59条(みなし譲渡)を適用し、被相続人に対してキャピタルゲイン課税を行う方法です。
しかし、相続財産法人は、被相続人の国税債務を包括的に承継する立場にあることを考えると、相続財産法人が財産を引き渡す段階で課税を行う第一の方法が、実務上、最も合理的で妥当であると考えられます。
増え続ける「相続財産法人」――制度整備が急務
相続人不存在というケースは、今後さらに増加していくことが確実視されています。それに伴い、相続財産法人を巡る税務処理の不備や制度的な歪みも、より深刻化していくでしょう。
相続財産法人は一時的な存在にすぎませんが、その間にも、所得は発生し、納税義務は確実に生じます。制度の趣旨と現場実務の乖離を放置すれば、税収の逸失だけでなく、納税者間の不公平も拡大しかねません。
今後は、相続財産法人に関する課税ルールの明確化と、税務運用の統一を進めることで、制度の健全な運用を図ることが強く求められています。
八ツ尾 順一
大阪学院大学 教授
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