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相続税法64条にある「不当に減少」とはなにか
相続税法の第64条「同族会社等の行為又は計算の否認等」1項では、家族経営などの会社(同族会社)を使って、相続税や贈与税を不当に安くするようなやり方をした場合には、税務署長がその行為や計算を否認できることが定められています。
条文では、次のように規定されています。
この規定は、同族会社を利用した形式的・作為的な取引によって、相続税や贈与税を回避する行為を防止するための、いわば包括的な否認規定と位置づけられています。
もっとも、「不当に減少」という文言は抽象的であり、その判断基準は必ずしも明確ではありません。したがって、実務では個別の事案ごとに、判例の考え方を踏まえた慎重な検討が求められます。
【判例①】生前の同族会社への「貸付金免除」は不当か?
最初に紹介するのは、同族会社に対する貸付金の免除が、相続税法64条1項により否認できるかどうかが争われた事案です(浦和地裁昭和56年2月25日判決)。被相続人は同族会社X社の代表者で、生前にX社に対する貸付金を免除していました。
これに対して税務署長は、この債務免除行為を相続税法64条1項に基づいて否認。免除額を相続財産に算入して、相続税を課税しました。
これを不服とした相続人は、取消訴訟を起こしました。
裁判では「納税者側」が勝訴
裁判では、相続税法64条1項の適用を否定され、納税者側の主張が認められました。裁判所は、「貸付金の免除は被相続人の単独行為であり、同族会社が主体的に関与した「同族会社の行為」とはいえない」と判断したのです。
貸付金免除は不当行為にあたらない…ただし「時期」に注意
この判決は、相続税法64条が争点となった最初の判例であり、その後の実務に与えた影響は非常に大きいといえます。
たとえば、代表者が重い病気で余命が限られている状況で、生前に同族会社への貸付金を免除したとしても、それだけでただちに相続税法64条が適用されるわけではないことが示されました。
ただし、注意すべき点もあります。被相続人の死亡後に、相続税を減らす目的で、あたかも生前に債務免除が行われたかのように装う行為は「事実の仮装」にあたり、重加算税の対象となります。
また、同族会社側では、債務免除額を「益金」として計上する必要があり、法人税等の課税関係が生じます。繰越欠損金がある場合には課税されないこともありますが、慎重な税務処理が求められます。
