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クレカ決済の高額な手数料で、商店の利益が吹き飛びかねない
私が現金派に転向したのは、2010年のこと。ちょうど、ボストン連邦準備銀行(米国連邦準備銀行の1つ)から「消費者の決済手段に関する調査」を支援する無報酬のアドバイザーチームへの参加を要請されたころだ。念のため、お断りしておくが、記載されていることは、すべて私個人の見解であり、連邦準備制度での立場を代表するものではない。
中央銀行の仕事でよく知られているのは、利上げ・利下げなどの金利調整だが、これに加え、市中銀行との間で通貨の供給・回収も担っている。どのくらいの通貨を流通させる必要があるのかを決定するため、中央銀行は消費者の決済方法を把握しようと考える。米国で言えば、連邦準備理事会(FRB)の仕事だ。
その際に、最良のデータ収集手段について議論し、調査の設計・実施に関する専門家の助言を必要としていた。そこでお呼びがかかったのが、ビジネススクールの教員であり、調査や富の研究を専門とする私だった。
調査の諮問委員会委員に就任した当時の私は、消費者の現金決済の状況や電子決済の動向についてあまり詳しくなかった。
2018年に諮問委員会が解散するころに、ようやく理解し始めたことがある。太っ腹なポイントを付与するクレジットカードで、小さなチョコレート菓子を買うような単純な行為でも、商店のオーナーの利益が吹き飛びかねないのだ。高額のカード決済処理手数料が発生するからである。
現金は厄介者か、それとも必要資産か
そこで、私は主に短いオンライン記事の形で自分の考えを発表し始めた。そのうち、IMF(国際通貨基金)のチーフエコノミストであるケネス・S・ロゴフ著『THE CURSE OF CASH』(邦訳『現金の呪い│紙幣をいつ廃止するか?』)の書評依頼が舞い込んできた。
その本の著者は「先進国が紙幣の大部分を排除する機は熟したか」とストレートな問いを突きつける。現金はその役目を終えてもまだ生き長らえているとロゴフは指摘し、現代経済にまとわりつく厄介者と説く。
同書を読み終えた私は、ボストン連邦準備銀行のデータを分析しながら、ロゴフの指摘について考えを巡らせているうちに、まったく逆の結論にたどり着いた。
現金は、追い払うべき呪いどころか、少々問題はあるものの、デジタル経済の中でも多くの優位性があったのだ。
