60代の父が急死、遺された母に「パート就労」を勧めたら…
都内の中堅企業に勤務する独身の会社員の鈴木多恵さん(32歳・仮名)は、横浜市の実家に暮らす母親のことで頭を痛めています。
「私が育った家庭は、両親と2歳違いの妹の4人家族。私と妹は大学卒業後、都内の会社に就職して独立しました」
多恵さんの日常が大きく変わったのは2年前です。まだ若いと思っていた、当時68歳の父親がゴルフ場で心筋梗塞を起こし、急死してしまったのです。
「まさに青天のへきれきで、葬儀や相続などわからないことだらけ。手続きは本当に大変でしたが、専門家に相談しながらどうにか片付けました」
多恵さんの母親は専業主婦で、ほとんど働いたことがありません。父親がこれほど早く亡くなることは想定していなかったことから、まずは母親の生活を安定させるため、自宅不動産も預貯金も、すべて母親に相続させることになりました。
「とりあえず自宅はあるし、預貯金もそれなりにあります。母からは実家に戻って一緒に暮らすか、そうでなければ毎月の生活費の援助を求められましたが、私も妹も多忙ですし、そこまで高給取りではありません。だから母に〈年金をもらいながら簡単なパートをしてみてはどうか〉と勧めたのですが…」
多恵さんの母親は66歳。父親の一周忌を前に、知り合いのツテで紹介してもらった、近所の飲食店の裏方を担うパートを始めました。
「お父さんの車が盗まれた…!」
ある日の週末、実家の近くに用事があった多恵さんは、母親の顔を見にフラッと実家へ寄ることにしました。
最寄りのバス停から実家に向かって歩いていたところ、見覚えのある車とすれ違いました。
「あれ、あの車は…」
振り返ると、まさにそれは母が相続した、父の遺産の水色のドイツ車です。多恵さんは血相を変えて実家まで走り、挨拶もそこそこに玄関から上がり込むと大声で叫びました。
「お母さん! お父さんの車が盗まれた!!」
