投資で資産増の元会社員、酒の席で「投資はいいぞ」
都内のメーカーで定年まで勤め上げた佐藤さん(仮名)は、60歳時点で約4,000万円(退職金含む)を老後資金として持っていました。年金は月25万円。住宅ローンは完済済みです。
「預金だけでは目減りする」と考え、60歳から本格的に資産運用を始めました。米国株ファンドを中心にして個別株も。5年後のリタイア時には全資産が6,000万円を超えました。
そんな折に開かれた友人との集まり、話題は老後資金へ。細かい金額こそ伏せたものの、佐藤さんは「投資で1,000万円以上増えた」「投資いいぞ!」とつい口にしました。
投資で資産を増やせることを知ることは大切。自慢というより「よい情報を共有する」という善意の気持ちでした。しかし、酔いもあって調子に乗っていたのは事実だと振り返ります。
それから数ヵ月後。友人の山本さんから思わぬ電話がかかってきたのです。
「お前の話なんて聞かなければ」
山本さんの声は震えていました。
「佐藤、大変なことになった」
話を聞くと、山本さんは佐藤さんの話をきっかけに投資に興味を持ったといいます。自己資金は約800万円でしたが、「もっと早く、もっと増やしたい」と焦り、信用取引で2倍レバレッジをかけ、雑誌やネットで知った半導体関連や成長株に大胆に集中投資しました。
ところが、株価は約30%下落。評価損は約480万円に膨らみ、信用取引の仕組みにより一部強制決済も発生。結果として元本の約60%を失い、手元に残った現金は約320万円に。
山本さんは「この損を取り戻さなければ」と、残った資金をさらに高リスク運用に回しました。しかし、選んだ株は下落し続け、最終的には元本をすべて失い、手元に残った資金はほぼゼロになってしまいました。
「お前の話を聞いて、もっと早く儲けたいと思ってしまったんだ。なけなしの老後資金を突っ込んだのに。お前の話さえ聞かなきゃ。投資なんて始めなければな……」
それは独り言のような呟き。逆恨みのようなものです。しかし、その言葉は佐藤さんの耳にこびりつきました。
