葬儀の夜に届いた、違和感のあるLINE
「姉ちゃん、相続の話は落ち着いてからでいいよ。細かいことは、前に話してた内容で進めるから」
父を見送ったその夜、長女の真奈美さん(仮名・46歳)のスマホに、弟からこんなLINEが届きました。説明はほとんどなく、前提を共有しているかのような書きぶりでした。
「“前に話してた内容”って、何のこと?と…。その時点で、嫌な予感がしました」
父・浩一さん(仮名)は地元で長く暮らし、不動産と有価証券を中心に、遺産はおよそ1億円にのぼりました。ただ、生前に遺言書について具体的な話をしたことはなく、相続を家族全員で話し合った記憶もありませんでした。
翌日、きょうだい3人が実家に集まると、真奈美さんの違和感は確信に変わります。弟と妹は、最初から話の筋が決まっているような様子だったのです。
弟が切り出しました。
「実家は俺が継ぐ。預貯金と証券は、俺と妹で分ける。姉ちゃんは、前に援助も受けてたしな」
まるで、すでに合意済みの事項を確認するかのような口ぶりでした。
真奈美さんは言葉を失いました。確かに過去、結婚資金として父からまとまった援助を受けたことはあります。しかし、それが相続から外される理由になるとは思っていませんでした。
何より引っかかったのは、その前提が、自分の知らないところで「決まった話」になっていたことです。
「え、待って。私、その話、一回も聞いてない。これ、私だけ何も知らされてなかったってこと?」
沈黙のあと、弟が小さくため息をつきました。
「揉めたくないからさ。姉ちゃんって、言い出すと長いじゃん」
弟と妹の説明はこうでした。
父は晩年、「実家は弟に任せたい」と繰り返していた。相続の話をすると父が嫌がるため、具体的な話し合いは避けてきた。だから、揉めないために、弟・妹の間で方向性だけ先に決めていた――。
真奈美さん抜きで、「円満相続」を意識した話し合いが進められていたというのです。
