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「黙っていればわかるまい」火葬場で明かされた策略
父がその身に託していたのは、究極の「現物資産」。大きく口を開けたり歯医者に行ったりしない限り、黙っていれば誰にもわからない資産防衛でした。なんと父は、笑ったときにみえる前歯はそのままに、人目につかない奥歯のすべてを、歯の形の20k近い金に特注で作り替えていたのです。
自身の健康を守る歯科治療ではなく、誰にも盗られない「持ち運び可能な資産」としての選択。預貯金でも不動産でもなく、自身の肉体に保管する――。これこそが、裏切りと犯罪を恐れ続けた父が貫き通した、執念の策略だったのです。
灰の中に輝く「70万円」の遺志
「オヤジ……」火葬が終わり、収骨の時間を迎えたAさんは唖然とします。お骨上げの箸を止めたその先にあったのは、熱で多少変形し、一部が溶け出した不揃いな金の塊でした。
専門業者に確認したところ、亡くなった日の買取価格に基づいたその資産価値は、およそ70万円。父が、文字どおり肌身離さず守り抜いた、最期の資産でした。
「隠された資産」とどう向き合うべきか
亡くなった際、現物資産は、預貯金や不動産と同じように相続財産であり、相続税の課税対象となります。金の相続税評価額は、被相続人が亡くなった日の業者買取価格(1gあたり)をもとに計算されます。
今回のケースでは、金の価値は70万円。これ単体で相続税の基礎控除額を大きく超え、即座に重い課税リスクに直結するケースは稀かもしれません。しかし、こうした「家族に秘匿された現物資産」には、特有の注意点があります。
国税庁の「令和5事務年度における相続税の調査等の状況」によると、申告漏れ財産の金額構成比は現金・預貯金等が29.1%、つづいて有価証券(13.6%)、土地(12.3%)、家屋(1.7%)となっています。
ほかに預貯金や不動産があり、相続税の申告が必要な世帯の場合、こうした現物資産を「少額だから」と除外してしまうと、後々の税務調査で意図的な隠蔽を疑われる火種になりかねません。また、金が高騰している昨今、純度等によって少量でも価値を持ちます。相続人が複数いる場合、こうした「あとから出てきた現物」のわけ方を巡って、親族間の感情的なトラブルに発展することもあります。
Aさんの父のように黙っていればわかるまいと家族にも話さないでいた場合、相続税の申告漏れになってしまうリスクがあります。また隠していると追徴課税される可能性があるため注意が必要です。
Aさんの父の「誰にも渡したくない、盗られたくない」という孤独な決意は、裏を返せば、残された家族への信頼の揺らぎでもありました。疑り深い親の気持ちに寄り添いつつも、生前に親子でコミュニケーションをとる、エンディングノートや遺言書を遺すことが必要だったのかもしれませんね。
〈参考〉
国税庁:「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pd
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
共同代表
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