コストパフォーマンスのよい人材活用術
インターンシップというとコストがかからないイメージがあるかもしれませんが、もちろんすべて無料というわけではありません。
長期インターンシップにかかる費用は学生へ支払う活動支援金と、災害傷害保険や賠償責任保険などの保険料、コーディネート機関に払う手数料があります。
あとは各企業がどれだけコストをかけるかです。私の会社の場合、学生の日々の交通費や出張の際にかかるホテル代や食事代などの経費などを負担しているので、学生一人あたりに換算すると一カ月あたり約14万円の人件費となります。そのほか、昼食や夕食など、毎日のように学生を連れて食事に行っています。
また、私の会社にくる学生たちは、半年間のインターンシップ期間が終了したら8割ほどがアルバイトとして会社に残ってくれています。
その際にかかるコストは時給1000円と交通費、経費のみ。半年間のプロジェクトを終え、会社の業務もある程度覚え、モチベーションが高まっているスーパー大学生の力を時給1000円で活用することができるのです。
もちろん、コストがすべてというわけではありませんが、中小企業にとって人件費は非常に大きな問題です。「優秀な人材を雇いたいけど、コストをかけることができない」と、挑戦をあきらめていた経営者にとって、これほどコストパフォーマンスのよい人材活用術はあるでしょうか。
[図表]長期インターン生受け入れにかかるコスト例
インターン生はやる気にあふれてよく働き、「会社のために」という気持ちで活動してくれています。かかってきた電話も率先して取りますし、頼みごとをすればすぐに取り組んでくれる。既存社員と同じくらい働いてくれると言っても過言ではありません。
このように前向きに働いてもらうためにはモチベーションアップが不可欠です。その仕掛けとして、インターン生には常に競争意識を持つよう働きかけています。そのためにも、同時に複数のインターン生を活用することが大切です。
一人だけだと孤立感を抱えてしまい、悩みがあっても吐き出せずにつぶれていきます。仲間がたくさんいればいるほど、お互いにフォローし合い切磋琢磨することができるのです。
その結果私の会社では半年のインターン期間が終わってからも、8割くらいの学生がアルバイトとして通い続け、さらに社員になりたいと手を挙げてくれる学生にも恵まれています。
優秀な人材を効率よく低コストで集めることができる
インターンからアルバイト、アルバイトから正社員になる過程で求められるハードルはどんどん上がっていきます。その間インターン生一人ひとりの行動を注意深く見ていれば、自ずとその人となりを見極めることができます。
わずか数分の面接で大手からこぼれた学生を拾うよりも、よほど効率よく優秀な人材を集めることができるのです。インターンシップを導入したことで、私の会社では新卒のリクルーティングは一切しなくてよくなりました。
従来の採用の場合、一旦正社員として雇ってしまうと会社の求める人材像と違っていたからといって退職させることはできません。しかし、いくら人材が不足しているからといって、中小企業が力を発揮できない人を雇う余裕はありません。
数回会っただけで採用するリスクを考えると、長い時間をかけて能力を見極め、信頼関係を築いた人を採用することができるのも長期インターンシップの大きなメリットです。
まだ何色にも染まっていない学生を受け入れ、仕事を通してその能力を引き出し、やる気のある優秀な人材を育成できる。これは一種の投資といえます。リクルート費に年間数百万円かけるなら、その分をインターン生受け入れに使うほうがより堅実な経営判断といえるのではないでしょうか。