学生たちは「新しいことをしたい」という意欲が強い
私の会社に来てくれた学生たちの多くは留学経験があるのですが、それも何か新しいことをしたい、といった意欲が高いからだと思います。
愛知県立大学の外国語学部の男子学生のN君は1年間カナダへ留学し、そこで磨いた語学力とコミュニケーション力を活かし、今では海外マーケット開拓を担当しています。主に彼が担当しているのは、インド事業です。
具体的なことは後述しますが、彼の得意な英語を活かし、インドの学生を技能実習生として日本に連れてくることを目的とした活動です。そのほかに、通訳や提携先との会議、インドの市場調査、新規顧客の開拓など多岐にわたります。
2016年3月にはインドの大学と提携し、候補者の育成クラスを開講しました。約40人の生徒の中でも特に優秀な4人を選抜し、毎週スカイプミーティングとレポート提出によって業界のことや、日本の労働観をレクチャーしています。
このように現地での人材確保の足がかりとしてインドの市場に一歩を踏み出せたのも、N君の功績です。
インドの大学に育成クラスを開講したのとほぼ同時期には東京大学の学生M君が長期インターンシップで私の会社に来てくれました。彼もカナダに1年間留学し、ものづくりに対して興味を持ったそうです。
M君は学生やインド人を用いた人材事業を組み立て、外国人の雇用形態を調査し実現可能なビジネスモデルをつくり上げました。将来、起業することを目標にしているM君は、今の段階から経営やコンサルティングの実践的な勉強をするために毎週、東京から新幹線で通っていました。
彼が半年間で成し遂げた大きな成果のひとつは、インターンシップとして私の会社で経験した「人材採用/教育」や「新規事業の立ち上げ」「インターネットを活用した販促」のノウハウを商品化し、中小企業の課題を解消するコンサルティング事業を立ち上げたことです。
これは、商工会議所などから紹介を受けた企業にヒアリングをし、課題の解決策をインターン生全員で検討したうえで提案をするもので、たとえば新たにインターンシップをはじめる企業の指導や、旅行代理店に若者ならではの発想でツアー企画を提案したりしています。
このコンサルティング業務は「ミチカラプロジェクト」と名づけられ本格的に始動しました。ロゴのデザイン、ホームページの作成、スキームの作成まで必要なものをこの学生が中心となってすべて一からつくり上げたのです。
これほど短時間で実績を残せたのは、彼らが賢く、意欲にあふれているからというのはいうまでもありません。
ただ、それは各学生の強みを把握し、適切なプロジェクトを任せることができれば、どんな企業でも同じような改革を起こすことができるはずです。
経営企画的な課題を与え、儲かる仕組みを考えさせる
そのことに気がついた、ある出来事がありました。
取引先の銀行の専務と支店長が来社し、会社の経営について話をしていたときのことです。たまたま経営学部の学生を同席させて話をしていました。
その学生は今まさに金融と経営について学校で学んでいたところでした。そんな学生が銀行の専務と支店長から話される、地方の景気や銀行の現状などを直接聞くことで、とても刺激を受けていました。
長期インターンシップを始めたばかりのその学生は、その日を境に目の輝き方が変わりました。私の会社の経営戦略について積極的に意見をしたり、疑問に思ったことはどんなに小さなことでも質問するようになったのです。
その学生にはそれ以降、経営企画的なミッションを与え、今学生たちが進行している各プロジェクトをいかに効率的に儲かる仕組みとするかを統括させました。
このように、学生の興味のある分野を見出し、適切なプロジェクトに配置することができれば、成長のスピードはぐっと速まり、モチベーションを高く保たせることができるのです。
とはいえ、学生たちは業務に取り組む意欲と学んだことのインプットとアウトプットのスピードが速いだけで、最初から業務を完璧にこなせるわけではありません。学生の適性を見極め、成長を促していくのはあくまでも受け入れ企業なのです。
ですから、長期インターンシップを活用することは私の会社だからできているわけではなく、どんな業種の中小企業でもできることです。自社の基幹事業をベースにプロジェクトを考え、主力となるサービス、商品と近接する業界で考えるのです。
テント業界である私の会社では、屋外テントだけでなく、テントの技術を応用して内装やインテリア、服飾品など、新たな分野を開拓することができました。既存の社員だけでは踏み出すことができなかった一歩を、学生たちの力を活用することで踏み出すことができたのです。