限定生産フェラーリは「減価しない資産」か
問題となったのは、「Ferrari 612 Scaglietti ANNIVERSARY F1」という限定モデルの売却事案です。
この車両を売却した納税者は、購入価格以下での売却だから、譲渡所得の申告を行いませんでした。その理由として、「このフェラーリは使用や時間の経過によって価値が減少する車ではない」と主張したのです。
納税者側の論理は次のとおりです。
このモデルは全世界で349台しか生産されておらず、購入できるのは長年フェラーリブランドに貢献してきた特定の顧客に限られる。実用的な移動手段としての車両ではなく、走行体験そのものが価値の中核を成す存在であり、美術品オークション会社で取引される性質も有する。他の車両との代替性はなく、希少性は極めて高い――。
したがって、この車両は減価償却を要しない資産である、という主張でした。
国税不服審判所の判断と残された疑問
これに対し、東京国税不服審判所は納税者の主張を退けました。
判断のポイントとされたのは、「数百台が生産されていること」と「売却時点での経過年数が約20年程度にすぎないこと」です。
これらを踏まえ、同審判所は、この車両について「歴史的価値または希少価値を有し、かつ代替性のない資産とはいえない」と判断し、減価償却資産に該当すると結論づけました。
しかし、この判断にはなお疑問が残ります。
希少性は、世界全体での生産台数を基準に判断すべきなのか、それとも日本国内での流通実態を重視すべきなのか。また、「20年では足りない」とするなら、50年が経過すれば非減価償却資産になるのでしょうか。その線引きは、必ずしも明確ではありません。
この棄却理由は、明確な条文基準というよりも、個別事情を踏まえた評価判断に依拠した側面が強い印象を受けます。
仮にこの事案が東京地方裁判所に持ち込まれた場合、判断が変わる可能性を完全に否定することはできないでしょう。
譲渡所得と減価償却の問題は、不動産に限らず、高額車両や美術品、さらにはコレクターズアイテムにも及ぶテーマです。
「これは減価しないはずだ」という感覚的な判断が、税務の世界では通用しないケースは少なくありません。
奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表
カメハメハ倶楽部セミナー・イベント
【1/7開催】
高市政権、トランプ2.0、日銀政策、AIバブル…
2026年「日本経済と株式市場」の展望
【1/8開催】地主の資産防衛戦略
「収益は地主本人に」「土地は子へ」渡す仕組み…
権利の異なる2つの受益権をもつ「受益権複層化信託」の活用術
【1/8開催】
金融資産1億円以上の方のための
「本来あるべき資産運用」
【1/10-12開催】
「タックスヘイブン」を使って
節税・秘匿性確保はできるのか?
「海外法人」の設立法・活用法
【1/10-12開催】
遺言はどう書く?どう読む?
弁護士が解説する「遺言」セミナー<実務編>
