「年収1,000万円もあって、自由にできるのは月2万円」
「年収1,000万円あっても、昼にコンビニでコーヒー1本買うのすらためらう――ふと、『俺って何なんだ?』って思いました」
そう語るのは、都内在住の会社員・松井俊彦さん(仮名・52歳)。大手メーカーの管理職として勤務し、年収は約1,000万円。共働きの妻(50歳)と高校生の娘の3人暮らしです。
「住宅ローンは完済済み。生活に困っているわけでもない。なのに、私の小遣いは“昼食代込みで月2万円”です」
交通費やランチ代、たまの飲み会もその中でやりくり。仕事帰りのコンビニコーヒーさえ「贅沢」と感じるようになったといいます。
松井さんは結婚当初から、家計管理を妻に任せてきました。妻はパート勤務をしており、節約意識が高く、教育費・生活費の振り分けも緻密に行っていたそうです。
「信頼していましたし、“任せるのがいちばん”と思っていた。でも、気づいたら“金を稼ぐだけの存在”になっていたんです」
最近では、娘のスマホ代・塾代・交際費もすべて“家計から出すもの”と決められており、松井さんの意見が通ることはほとんどなかったといいます。
総務省『家計調査年報(2024年)』より、二人以上の世帯の消費支出を世帯主の年齢階級別にみると、50~59歳の世帯は356,946円。教育費や食費、住居費が家計を圧迫するなか、小遣いに回せる金額は“年収に比例して増える”わけではないという現実もあります。
「別に妻を責めたいわけじゃないんです。娘の教育費を考えたら、節約も当然だし。ただ、これが“対等な関係”なのかって思うと、複雑ですよね」
松井さんは一度、「小遣いをもう少し増やしてほしい」と相談したことがあるそうです。しかしそのとき妻は、「何に使うの?」「今のままで困ってないでしょ」と言って話が終わってしまいました。
「俺はATMなのか?――本気でそう思いました」
