(※画像はイメージです/PIXTA)

金市場は、構造的な強気サイクルのなかで高値圏を維持しやすい環境にあります。2025年の急騰からは上昇ペースが鈍化し、4,000~4,500ドルでの値固めが基本シナリオとみられる一方、ストラテジストたちは旺盛な需要とドル安トレンドを背景に、1オンス5,000ドル到達の強気シナリオにも注目しています。高騰を支える要因と2026年に予想される金市場の展開についてみていきましょう。なお、本稿はステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの5名のストラテジストによる共同執筆です。

アジア太平洋で金投資需要加速

アジア太平洋(APAC)の金市場は、ETFと広範なリテール投資家と機関投資家の需要に支えられ、2026年に力強い成長を遂げる見込みです。地政学上の変化と脱ドル化は分散投資を後押ししており、中国、インド、日本がそうしたトレンドを主導しています。

 

中国:機関投資家の需要と政策変化

中国では近年、株式および不動産市場の低迷を背景に金投資需要が急増しています。景気不透明感と貿易摩擦のなかで、金はポートフォリオのヘッジとして機能しています。

 

2025年初め、保険会社10社に対して総資産の最大1%を金に投資することを認める試験的プログラムが開始されました。これまでに、そのうち6社が上海金取引所に口座を開設しています※31。中国人民銀行がそれらの上限を引き上げた場合、機関投資家の金需要がさらに拡大する可能性があります。

 

中国が9月に発表した、外国政府が保有する金準備の保管国としての役割を担うという計画※32は、準備資産の分散化と制裁からの防衛を模索する新興国市場の中央銀行による新規の金購入を促す可能性があります。

 

この動きは、外国政府が保有する金をロンドンやニューヨークから移動させるというより、新たな需要を生み出すことを狙いとしており、地政学的戦略と、人民元主導での脱ドル化の推進を反映しています。

 

中国における高価格は宝飾品向けの金需要に水を差す可能性がある一方、ETFへの強い関心と、若者の間での「金豆」(豆粒大の純金)の人気※33に支えられ、2026年も旺盛な金投資需要が持続すると思われます。

 

インド:経済成長とリテール需要のトレンド

インド経済は急成長軌道に乗っており、アセットマネジャーは金へのエクスポージャーを拡大しています。所得の増加、インフレヘッジ、ルピー安、婚礼や祝祭などの文化的伝統といった構造的要因が金の需要を支えています。最近の規制改革は、税制を簡素化することで金をベースとする金融商品の魅力をさらに高めています。

 

インドの金ETFの運用資産額(AUM)は2020年以降に15.5倍に急増して109億ドルに達し、世界の金ETFのAUMを上回る伸びを示しています※34。金を含むマルチアセット・ファンドも、個人投資家からの資金流入を後押ししています。

 

現地価格の上昇に伴い宝飾品向け需要は軟化する可能性がありますが、構造的要因と金融リテラシーの向上により、旺盛な投資需要が持続すると思われます。

日本の金需要をけん引する円安とNISA

日本:投資需要と通貨動向

円安、少額投資非課税制度(NISA)、記録的な金価格の高騰に後押しされ、2025年の日本における金需要は投資へとシフトしました。日本銀行が12月の利上げを示唆しているにもかかわらず、円は対米ドルでG10通貨の中で最弱となっており、第4四半期に4.3%下落しています※35

 

宝飾品需要は弱いものの、家計と機関投資家が円安とマクロ不確実性に対するヘッジを講じるなか、投資経路(特に投資信託とETF)を通じて金への旺盛な資金流入が見られています。

 

金価格が記録的高水準にあるにもかかわらず、日本籍の金投資信託およびETFは2025年初来で金123トン分の純資金流入を記録しており、これは2024通年の5.5倍に相当します※36

 

高市首相の下での日本の成長促進政策と金融緩和は、円安と低い実質金利が続くことを示唆しており、これは2026年に金需要の伸びを支える可能性があります。

 

機関投資家の金保有が限定的であることは金への戦略的資産配分を促し、たとえ2025年の熱狂的なペースから伸びが鈍化するとしても2024年以前の水準を構造的に上回る金需要が維持される可能性があります。

 

[図表8]投資信託とETFへの旺盛な資金流入が日本の金投資需要を後押し★8

 

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〈ご留意事項〉
本書は、投資の推奨や投資アドバイスを意図したものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。

本稿に示されている内容は2025年11月25日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場及び他の条件によって変更される場合があります。本稿には将来予測に関する記述と見なされる情報が含まれており、そうした内容は将来の運用成果を保証するものではなく、実際の結果や展開は予測とは大きく異なる可能性があります。

提供された情報は、投資助言に該当するものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。本情報は、有価証券の購入の勧誘または売却の申出とみなされるべきものではありません。本情報は、投資家の特定の投資目的、戦略、税務上の地位または投資期間を考慮したものではありません。ご自身の税務・財務アドバイザーにご相談ください。

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分散投資は、利益の確保または損失を防ぐことを保証するものではありません。
本資料は、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが作成したものをステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が和訳したものです。内容については原文が優先されることをご了承下さい。

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© 2025 State Street Corporation. 8662948.1.2.APAC.RTL Exp Date:12/31/2026

〈注記〉
※1 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※2 国際金融協会(IIF)、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年6月30日時点。
※3 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※4 米投資信託協会 2025年9月30日時点。
※5 国際決済銀行(BIS)、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※6 IIF、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※7 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※8 ワールド ゴールド カウンシル 2025年10月31日時点。
※9 ワールド ゴールド カウンシル 2025年10月31日時点。
※10 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月5日時点。
※11 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月5日時点。
※12 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P. 2025年11月7日時点。
※13 ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月6日時点。
※14 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月6日時点。
※15 ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年10月31日時点。
※16 ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年10月31日時点。
※17 ワールド ゴールド カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年10月31日時点。
※18 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データは2025年11月30日時点。
※19 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データは2025年11月30日時点。
※20 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データは2025年11月30日時点。
※21 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月5日時点。
※22 ワールド ゴールド カウンシル 2025年11月5日時点。
※23 国際通貨基金(IMF) 2025年10月31日時点。
※24 IMF 2025年10月31日時点。
※25 IMF 2025年10月31日時点。
※26 IMF 2025年10月31日時点。
※27 中国人民銀行(PBOC) 2025年10月31日時点。
※28 PBOC 2025年10月31日時点。
※29 ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※30 ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月18日時点。
※31 上海金取引所 2025年10月31日時点
※32 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P. 2025年9月23日時点
※33 「金豆」(豆粒大の純金)、しばしば1~10グラムの重さ
※34 ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年10月31日時点
※35 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月14日時点。
※36 ブルームバーグ・ファイナンス, L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント 2025年11月14日時点。

★1 出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント(1990-2025年)。

注:米国株式にはS&P500指数を、米国債券には、投資適格の米ドル建て固定金利課税債券市場のパフォーマンスを測定するブルームバーグ米国総合指数を使用しています。金にはロンドン貴金属市場協会(LBMA)スポット価格終値、米ドルにはドル指数(DXY)を使用しています。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。

★2 出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、データは2025年11月21日時点。

注:USD=米ドル、EUR=ユーロ、JPY=円、GBP=英ポンド、CHF=スイスフラン、SEK=スウェーデン・クローナ、NOK=ノルウェー・クローネ、CAD=カナダドル、AUD=オーストラリアドル、NZD=ニュージーランドドル。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。

★3 出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2025年11月20日時点。

★4 出所:ワールド・ゴールド・カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2025年10月31日時点。

★5 出所:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、ワールド・ゴールド・カウンシル、2025年10月31日時点。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。

★6 現在のFF金利とSEPの長期予測との大きな差は2026年も緩和が続くことを示唆

★7 出所:ICEベンチマーク・アドミニストレーション、メタルズ・フォーカス、リフィニティブGFMS、ワールド・ゴールド・カウンシル、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。データは2025年11月18日時点。

注:2025年の推定値は、同年第3四半期の純購入量634トン(報告ベース)と、2011-24年の年間需要に占める第4四半期の平均比率(25%)から導出した第4四半期の推定需要量に基づいています。2026年の予測値は、2011-25年の公的部門需要の前年比伸び率を適用して導出しており、基本シナリオではその平均値、強気シナリオでは80パーセンタイル値、弱気シナリオでは20パーセンタイル値を使用しています。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。

★8 出所:ワールド・ゴールド・カウンシル、ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。データは2020年1月1日-2025年11月14日。過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。

〈用語集〉
弱気相場……有価証券の価格が下落し、ネガティブな投資家心理が強まる局面。正確な測り方は様々ですが、少なくとも2カ月にわたって広範な市場指数が高値から20%下落した場合、多くの人々から弱気相場と見なされます。この用語は、熊が爪で獲物を襲う際に腕を振り下ろすイメージから派生しています。

強気相場……市場の上昇局面を指し、一部では2年連続での上昇と定義されています。この用語は、雄牛がツノを振り上げるイメージから派生しています。

相関係数……相関係数は、2つの変数間の線形関係の強さの統計的尺度です。値の範囲は-1から+1で示されます。

ディベースメント取引……財政拡張や継続的な金融緩和で通貨の購買力が目減りしやすい局面に備え、金・コモディティ・インフレ連動債などの“通貨に強い”資産を分散して組み入れる投資戦略のこと。

上場投資信託(ETF)……ETFは、原資産(通常は指数)へのエクスポージャーを提供するオープンエンド型ファンドです。個別株と同様に、ETFは取引所で終日売買されます。投資信託とは異なり、ETFは空売りと信用買いが可能で、多くの場合は付随するオプションが存在します。

フェデラル・ファンド(FF)金利……銀行とその他の預金金融機関が(通常はオーバーナイトベースで)互いに資金を貸し借りする金利。

フィアット通貨……政府が法定通貨であると宣言した貨幣ですが、現物のコモディティで裏付けられていません。フィアット通貨の価値は、歴史的に、その材料として使用されている金や銀などの価値ではなく、需要と供給に連動しており、その国の信頼と信用のみに基づいて決まります。

国内総生産(GDP)……特定の期間に、その国で生産された財やサービスの総額を示す指標。一国の経済に関する健全性を示す重要な指標で、報道や政府によってしばしば引用されます。

インフレ……一定の期間での経済の財とサービスの価格における全般的な上昇で、通貨単位あたりの購買力の喪失につながります。インフレは多くの場合、通貨供給量が経済成長を上回るペースで増加するときに起こります。中央銀行は経済を円滑に運営するため、インフレの抑制やデフレの回避を目指します。

量的緩和(QE)……金利を低下させ、借入を促進し、経済活動を刺激するために中央銀行が国債を購入する例外的な金融政策措置。量的緩和は、短期金利がゼロか、ゼロに接近している場合に検討され、新規紙幣の印刷を伴うものではありません。量的緩和は、貸出と流動性の拡大を促すために、金融機関に資本を大量に供給することでマネーサプライを増加させます。

金のスポット価格……スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。

米国債……中央政府の債務であり、「政府証券」としても知られる国債は、一国の信用力と課税力に裏打ちされているため、債務不履行のリスクはほとんどないか、全くないとみなされています。

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