(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の中には、金融機関をあまり利用せず、自宅で現金を保管する習慣を持つ人も少なくありません。理由は「通帳よりも現金のほうが安心」「万が一のときにすぐ使えるようにしておきたい」といったものですが、その存在が家族に共有されていなければ、相続時に発見されずに放置されたり、思わぬトラブルに発展したりする可能性もあります。今回は、「100万円はタンスの裏にある」という85歳の父の言葉が、思いがけず現実だったという家族のエピソードをみていきます。

相続トラブルにも発展しかねない「隠し現金」

自宅に保管していた現金(いわゆる“タンス預金”)は、銀行預金とは別に、相続税の課税対象として申告する必要があります。国税庁の相続税制度の下では、現金も遺産の一部として計上されなければならず、申告漏れがあると税務調査で指摘される可能性があります。実際、相続税の税務調査では、現金・預貯金などの申告漏れが生じやすい財産項目として注目されています。

 

「正直、父が亡くなってから見つけていたら、兄妹で揉めていたかもしれません。今回は施設入所前だったから、本人から聞けていたし、書き置きもありました」

 

「年をとると、“隠しておく”ことが“守ること”になってしまうのかもしれません。でも、それが家族を困らせることもあるんだって、実感しました」

 

高齢者の現金保管には、「万が一のときに迷惑をかけたくない」「自分の自由に使いたい」という思いが込められていることが少なくありません。しかし、それが結果的に相続や介護の現場で“火種”になることもあるのです。

 

“隠す”のではなく、“伝える”。家族に迷惑をかけたくないならこそ、元気なうちに「どこに何があるか」を共有しておくことが、最も確実な“備え”かもしれません。

 

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