(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の中には、金融機関をあまり利用せず、自宅で現金を保管する習慣を持つ人も少なくありません。理由は「通帳よりも現金のほうが安心」「万が一のときにすぐ使えるようにしておきたい」といったものですが、その存在が家族に共有されていなければ、相続時に発見されずに放置されたり、思わぬトラブルに発展したりする可能性もあります。今回は、「100万円はタンスの裏にある」という85歳の父の言葉が、思いがけず現実だったという家族のエピソードをみていきます。

「100万円、タンスの裏にあると言われたんです」

「冗談で言っているんだと思って、ずっと気にしていなかったんです。でも、まさか本当にあるとは…」

 

そう語るのは、埼玉県在住の主婦・佐々木春香さん(仮名・55歳)。85歳の父・修一さん(仮名)が体調を崩し、施設入所が決まったことをきっかけに、兄とともに実家の整理を始めたといいます。

 

「“俺が死んだら、タンスの裏に100万円あるからな”って言われたのは2年くらい前。正直、昔の人がよく言うジョークだと思っていました」

 

実家の和室には、桐箪笥や古い洋服ダンスが並んでいました。その中の一つを動かしたとき、壁とのすき間にビニール袋に入った茶封筒が数枚、無造作に落ちていたといいます。

 

「中を見たら、1万円札がぎっしり入っていて。封筒ごとに“自動車保険”“緊急時用”“親戚用”って書かれていました。計算したら、100万円ちょっとありました」

 

一緒にいた兄も絶句。誰にも話していなかった父の“へそくり”が、タンス裏にそのまま保管されていたのです。

 

修一さんは、長年地元の町工場で働いてきた実直な人柄。過去に金融機関のトラブルに巻き込まれたこともあり、現金を手元で管理することにこだわっていたといいます。

 

「“通帳なんか、機械の中の数字でしょ”と言っていました。確かに、年を取るとATM操作や振込手続きも難しくなるし、不安になる気持ちもわかりますが…」

 

今回のように、故人が家庭内に現金を隠していた場合、発見が遅れたり、相続人の一部しか知らなかったりすると、相続トラブルに発展する可能性もあります。とくに、家族間での不信感や疑念が生じやすいのが「タンス預金」の厄介な点です。

 

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