(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化が進むなか、一人暮らしの高齢者は増え続けています。内閣府『令和7年版 高齢社会白書』では、2025年時点で65歳以上の一人暮らしは男性18.3%、女性25.4%と推計され、今後も増加が見込まれています。 近くに家族がいても、関係がこじれると「つながり」は簡単に途切れてしまう――そんな現実が静かに広がっています。

「娘に着信拒否されている?」一人暮らし女性の絶望

「ねえ、出て……お願いだから出てよ」

 

東京都内の団地で一人暮らしをする佐々木京子さん(仮名・76歳)は、娘の番号に何度も発信しながら、スマートフォンを握りしめていました。

 

夫に先立たれて7年。友人との外出も減り、いまの支えは「娘と月に数回話す時間」だけ。年金は月13万円ほど。贅沢はできなくても、暮らしは何とか回していました。

 

その夜、京子さんは体調が悪く、心細さから娘に電話をかけたといいます。ところが――。

 

「『おつなぎできません』って。最初、意味が分からなくて……」

 

何度かけてもすぐ留守番電話に切り替わる。不審に思ってメッセージを送っても既読がつかない。そのとき初めて、「拒否されているのかもしれない」と気づきました。

 

「私、何のために生きてるの?って、床に座り込んで泣いてしまって……」

 

娘の美咲さん(仮名・45歳)とは、ここ数年、会話がぎくしゃくしていました。京子さんは「生活が苦しい」とまでは言わないものの、食費や光熱費の値上がりが続くたびに、つい弱音が出てしまう。

 

「年金だけじゃ不安なのよ」

「……またその話? 私だって余裕ないよ」

 

美咲さんは仕事と子育てで手一杯。そこに母の不安が重なると、会話はいつも同じ結末になりました。

 

「私からしたら“愚痴”じゃなくて、“助けて”だったんです。でも娘は、“重い”って顔をするようになって……」

 

京子さんが「せめて週1で電話して」と言った日、美咲さんは黙り込んだまま通話を切りました。それ以降、連絡はぱたりと減り、そして“拒否”が現実になったのです。

 

内閣府の『孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年実施)』では、孤独感に影響を与えた出来事として「一人暮らし」のほか、「家族間の重大なトラブル」「家族との離別・死別」などが挙げられています。つまり、“家族がいるかどうか”よりも、“関係が保てているかどうか”が、孤独の深さを左右する場面があるということです。

 

京子さんも、身内の拒絶がいちばん堪えたといいます。

 

「友達が減ったのは仕方ない。でも、娘に切られた瞬間、私は社会から消えた気がしました」

 

次ページ「娘さんを責めないで、支えを分散しましょう」
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