「娘に着信拒否されている?」一人暮らし女性の絶望
「ねえ、出て……お願いだから出てよ」
東京都内の団地で一人暮らしをする佐々木京子さん(仮名・76歳)は、娘の番号に何度も発信しながら、スマートフォンを握りしめていました。
夫に先立たれて7年。友人との外出も減り、いまの支えは「娘と月に数回話す時間」だけ。年金は月13万円ほど。贅沢はできなくても、暮らしは何とか回していました。
その夜、京子さんは体調が悪く、心細さから娘に電話をかけたといいます。ところが――。
「『おつなぎできません』って。最初、意味が分からなくて……」
何度かけてもすぐ留守番電話に切り替わる。不審に思ってメッセージを送っても既読がつかない。そのとき初めて、「拒否されているのかもしれない」と気づきました。
「私、何のために生きてるの?って、床に座り込んで泣いてしまって……」
娘の美咲さん(仮名・45歳)とは、ここ数年、会話がぎくしゃくしていました。京子さんは「生活が苦しい」とまでは言わないものの、食費や光熱費の値上がりが続くたびに、つい弱音が出てしまう。
「年金だけじゃ不安なのよ」
「……またその話? 私だって余裕ないよ」
美咲さんは仕事と子育てで手一杯。そこに母の不安が重なると、会話はいつも同じ結末になりました。
「私からしたら“愚痴”じゃなくて、“助けて”だったんです。でも娘は、“重い”って顔をするようになって……」
京子さんが「せめて週1で電話して」と言った日、美咲さんは黙り込んだまま通話を切りました。それ以降、連絡はぱたりと減り、そして“拒否”が現実になったのです。
内閣府の『孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年実施)』では、孤独感に影響を与えた出来事として「一人暮らし」のほか、「家族間の重大なトラブル」「家族との離別・死別」などが挙げられています。つまり、“家族がいるかどうか”よりも、“関係が保てているかどうか”が、孤独の深さを左右する場面があるということです。
京子さんも、身内の拒絶がいちばん堪えたといいます。
「友達が減ったのは仕方ない。でも、娘に切られた瞬間、私は社会から消えた気がしました」
