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妻の女子会についてくる夫
「今日は久しぶりに、学生時代の友達とランチなの」
そう声をかけると、夫の正徳さん(63歳・仮名)は当然のように言いました。「俺も行くよ」
千鶴子さん(61歳・仮名)は、その一言を聞いた瞬間、胸の奥が重くなるのを感じました。
千鶴子さんの夫は、誰もが知る大企業で本部長まで勤め上げた人物です。現役時代の年収は約1,300万円。定年退職時には、退職金として約3,000万円を受け取りました。
経済的な不安はなく、周囲から見れば「悠々自適な老後」を送っているように映ります。
一方の千鶴子さんは、結婚後、夫の父が営むクリニックの受付を手伝いながら家庭を支えてきました。PTA役員なども積極的に引き受け、地域活動にも熱心。もともと社交的で、友人の多い女性です。
学生時代の友人や趣味仲間とのランチは、千鶴子さんにとって長年の楽しみでした。
ところが、その日常は、夫の退職を境に大きく変わっていきます。
「最初は、夫の世界が広がればと思った」
退職後、千鶴子さんが外出しようとすると、夫は必ずついてくるようになりました。
「家にいてもやることがない」
「せっかく時間があるんだから」
最初はそんな理由でした。千鶴子さんも、「仕事一筋だった夫の世界が少しでも広がれば」と思い、同行を受け入れていたといいます。
しかし、ランチの席で夫はほとんど会話に加わらず、隣で黙々と食事をするだけ。
「えーと、あなたは営業職だったわよね? 現役時代は、あっちのパーティー、こっちの接待って言って午前さまも多かったのに……部下にも慕われていた、上司にも可愛がられていたって、あんなに自慢していたのに……もしかして、コミュニケーション能力が、ない?」
千鶴子さんは違和感を覚え始めました。
話し出したと思ったら、止まらない“現役時代の自慢”
ある日、友人のひとりが気を使って夫に話題を振りました。
「大きな会社にいらしたんですよね?」
すると夫は、待っていましたとばかりに話し始めます。
「あの時代はまだまだ日本が元気で……」
「部下も何十人もいたんだ」
語られるのは、現役時代の仕事の自慢話ばかり。話題は次第に、「だから女は感情的で」「女は結婚するって言ってすぐ辞めちゃうんだから。一体何しに会社に来ていたんだか」といった、女性を見下すような発言へと変わっていきました。
「恥ずかしくて、その場から消えたくなりました」千鶴子さんはそう振り返ります。
