築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
「相続」と「生前贈与」どちらが有利?
相続と生前贈与、それぞれのメリットとデメリットについて考えてみます。
生前贈与は生きているうちに進めるため、贈与する相手やタイミングを自分自身で決めることができます。また、相続との大きな違いは、贈与を受ける本人の意思確認が直接できることです。
財産の特性から見た場合、生前贈与に向いているのは、将来的に価値が上がっていくと見込まれる不動産です。今回の事例の場合、関東圏に不動産があるということで、場所によっては将来的な価値の上昇も見込まれるケースに当てはまる可能性があります。また、早くに引き継ぐことで賃貸収入を子供達に移転できるというメリットもあります。
しかし、生前贈与はメリットばかりではありません。贈与税率は相続税率よりも高いため、相続で適用される小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性があります。また、賃貸用不動産は賃料収入というキャッシュが毎年増えていくため、早期に対策しなければ相続財産が年々増え続けるというデメリットも存在します。
実際、ご夫婦の不動産所得の確定申告も毎年税負担が重く、それも悩みの1つでした。そこで、贈与税を抑えながら不動産を引き継いでいくことはできないかと考えました。少しずつ不動産を分割して引き継いでもらえたら、税負担が抑えられるためです。
しかし、ここにも大きな落とし穴があります。たしかに贈与税は毎年110万円までは非課税です。この非課税の枠に収まるように不動産を毎年引き継いだ場合には贈与税はかかりません。しかし、それによる不動産登記費用が毎年かかり、税金以外のコストが増えます。そして、なによりも引き継ぐまでに時間がかかるという点でおすすめできません。
では、相続で引き継いだ場合を考えてみます。相続については、小規模宅地の特例を利用することにより土地の評価額を最大50%~80%減額することができます。生前贈与とは反対で、不動産などであれば、評価が下がることが予測されているのであれば、早くに贈与するよりも相続の時点で引き継ぐという選択肢も考えられます。
デメリットとしては、遺産分割で揉める可能性が高いということです。現預金であれば平等に分割しやすいのですが、不動産は全員が納得する形で分割することができないケースが多くあります。また相続財産の割合で不動産が多い場合には納税資金が足りるのか事前に確認しておくことも重要です。
いざ、相続が発生した時に不動産を売却しないと相続税が払えないという状況になるとさらに遺産分割が難航してしまう可能性があります。
相続と生前贈与、これらにはどちらもメリット・デメリットがあります。一般に、今後評価が上がっていく見込みのA不動産は生前贈与して、評価が下がっていく見込みのB不動産は相続するというように、財産の特性に合わせて引き継ぎ方を選ぶことで、それぞれのメリットを上手に活かすことができるのです。

